コネクティビティが変革する物流の未来:特別ウェビナーレポート


UDトラックスとReVision Auto&Mobilityは7月11日、東京都千代田区のNTTドコモ本社で物流の未来とコネクティビティの可能性について議論するコネクティビティ・セミナー&ウェビナーを開催した。タイトルは「コネクティビティが変革する物流の未来 -つながるトラックが生み出すスマートロジスティクスの可能性を探る-」。セミナーではUDトラックス、NTTドコモの責任者・開発者や自動車ジャーナリストが様々な角度から議論した。

Date:2019/07/31
Text:ReVision Auto&Mobility 友成匡秀

 

写真左から、自動車ジャーナリストの清水氏、NTTドコモの中村氏、UDトラックスのラジュクマール氏、森氏、チャンドリカ氏

 

 セミナー&ウェビナーは、メディア関係者を会場に招いた座談会形式のセミナーと、一般視聴者へのウェビナー配信を組み合わせた初めての試み。メディア関係者や視聴者を含めて広く議論を起こそうと企画された。

データを共通化し、いかにプラットフォーム化していくか

自動車ジャーナリスト 清水氏

 会の冒頭、日常の生活の中に物流がどのように関わってくるかを一家族のストーリーで示すショート・ビデオが流された。ビデオの後に登壇したUDトラックスのデジタル・ソリューション&IT SVPのサティシュ・ラジュクマール氏は「コネクティビティがいかに物流の未来を変革するかを議論したい」とあいさつ。ラジュクマール氏が紹介する形で、自動車ジャーナリストの清水和夫氏が最初のプレゼンテーションを行った。

 清水氏はまず、自動車業界と政府が協力して進めている内閣府SIP第2期における社会実装への取り組みを説明。一例として、自動運転向けの地図(ダイナミックマップ)について触れ、様々な情報を地図の中に織り込むため、「“つながる”ことが前提となっている」と述べた。また政府が取り組む「Society 5.0」についても説明し、地方の例を引きながらデータをつなげることで移動を快適にできることを解説。目的を定めつつ、「データを共通化し、いかにプラットフォーム化していくかということは大事」と語った。

UDトラックス ラジュクマール氏

 ラジュクマール氏は壇上に戻ると、最初に流したビデオに言及しながら、人の暮らしにとって物流はなくてはならず、「物流は社会の血流である」と強調。そのためにも効率的で安全な輸送が必須であることを訴えた。一方で、渋滞やネット通販の拡大、ドライバー不足など、様々な課題が存在することも指摘し、そのソリューションとしてコネクティビティの可能性を挙げた。さらに、UDトラックスが属するボルボ・グループの”つながる車両”台数は100万台に達することを紹介し、「グループの技術力を活用し、各市場のニーズに合わせて適応できる」と力を込めた。

一つのチャンネルへ情報を統合する

UDトラックス チャンドリカ氏

 続いて、同社のコネクテッドソリューション部長を務めるシェティ・ライ・チャンドリカ氏が、コネクテッドソリューションにおける重点領域について、より掘り下げて解説。トラックの稼働率や生産性を高め、ドライバーや車両の安全性に配慮することなどに注力していることを説明した。将来に向けた技術としては、自動運転や電動化にも注力している。さらに、顧客の(物流各社)が多くのチャンネル上で情報を得ていて複雑化している領域について、UDトラックスでは「一つのチャンネル上で情報が見られるように統合し、運行や運営をより効率化していく」と述べた。

UDトラックス 森氏

 UDトラックスの国内外の具体的なサービスの解説については、同コネクテッドソリューション部ビジネスアナリストの森弘一氏が行った。森氏はまず、現在の“つながるトラック”が6万台に上っていると紹介。国内では、大きく分けて「稼働率向上」「品質向上」「生産性」「安全性」の4領域でサービスを展開し、具体的には、故障データや故障になりそうなデータ、車両の位置情報などを活用して、ロードサポートや予防保守・予防整備などにつなげているとした。海外では、稼働率向上や生産性ソリューションなどのほか、規制されたエリアへの侵入を防ぐジオフェンシング機能なども提供している。

5G導入は世界的に前倒し

NTTドコモ 中村氏

 こうした自動車業界側からの情報提供に対して、NTTドコモの執行役員で5Gイノベーション推進室長の中村武宏氏は、通信企業側の視点から講演。まず、次世代通信規格・5Gの導入状況について触れ、世界的に前倒しで導入が進みつつあり、国内ではNTTドコモが今年9月から始まるラグビーW杯でプレ5Gサービスを提供することなどを説明。また同社は「5Gオープンパートナープログラム」を開始しており、2800社を超えるパートナーが参加していると述べた。また、車関係の活動でも、最近の例として日産自動車との5GとAR技術を使った3Dアバターの事例を紹介し、「自動運転化したときに、このような方法でドライバーの方も家族の方とコミュニケーションを取れるのでは」と提案した。またAIタクシー、AI運行バスなどの取り組みを紹介し、サービス連携型MaaSで様々なビジネス創出が可能であることにも触れた。

コネクティビティ領域ではパートナーシップが重要

 プレゼンテーションの後は、登壇した5人が参加するパネルディスカッションを実施。「つながるトラックや通信技術の進化によるスマートロジスティクスの未来を考える」と題し、さまざまな意見交換がなされた。

 モデレータを務めた清水氏は「私たちが買える(価格帯の)乗用車の中に自動化技術やコネクト技術を入れていくのは大変な作業だが、むしろモノを運ぶ(トラックの)ほうが、もっと早く(自動化技術やコネクト技術を)社会実装できるのではないか」との見方を示した。

 データ・プラットフォームについての議論では、ラジュクマール氏は「コネクティビティを通じて、商品であることを超え、サービスを提供することでお客様の手助けをしたい」と語り、オープン化を志向する方針を明らかにした。そのために必要なこととして、チャンドリカ氏は「他のプラットフォームとの協調領域を増やし、データを活用していくことが大切」と述べた。また、森氏は、「稼働率の向上や安全は、お客様から常に要望がある」と紹介した上で、「パートナー様と有効なデータ・情報を使って、そこを向上させていけないかと思っている」と抱負を語った。

 中村氏は、冒頭のビデオのなかのトラックドライバーが女性であったことについて触れ、家族とのふれあいや、グローバル化による言葉の壁を乗り越える上でコネクティビティの有用性を訴えた。「これから、広い意味でコミュニケーションが物流のドライバー、地方創生、女性の活躍などいろいろなことがサポートできる」。

 議論の最後では、視聴者からのオンラインでの質問や会場フロアからの記者の質問も受け付け、「他の自動車メーカーとの取り組みは行っていますか」など多様な質問が寄せられた。議論の最後に、ラジュクマール氏は「コネクティビティ領域ではパートナーシップが重要。ビジネスパートナー、ウェビナー視聴者も含めて、協業できることを楽しみにしている」と業界内外に広く仲間づくりを呼び掛けていく姿勢を明確にし、セミナーを終えた。

 

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