マツダの自動運転は“人が運転を続けるため”の技術


統合制御システム開発本部 吉岡透氏【インタビュー】

「人間中心」「人馬一体」を掲げるマツダと自動運転技術は、あまり強く結びつかないイメージだ。しかし、その研究開発をしていないわけではない。では、マツダが考える自動運転技術、とはどういうものなのだろうか。

統合制御システム開発本部 副本部長 吉岡透氏に、マツダの考える自動運転技術、関連する制御技術について聞いた。

Date:2019/01/30

 

 

※この記事はレスポンス(Response)より提供いただき掲載しています。

 

ドライバーレスの自動運転はゴールにならない

----:これからの自動車社会を考えたときに、先行きが不透明で、クルマに対する夢が描きづらい状況になってきています。CASEの時代にマツダが目指すべき方向を教えてください。

吉岡透氏(以下敬称略):マツダは全社で「人間中心」という考え方を掲げています。いわゆるCASE車両であってもこの観点は変わりません。コネクテッド、自動運転、シェアリングカー、EV、どの領域でも社会や人間にとってためになるものであることが最優先事項です。

確かに、CASE関連の技術を駆使すればクルマ単体でできることは増えます。しかし、あれもこれも、できるからやる、便利そうだからやる、では収拾がつかなくなりますし、企業としてのメッセージも薄れてきます。マツダのような会社でそれをやる意義はありませんし、我々の役割でもないと思っています。どの技術についても、なにが人間中心になるのかを見極めながら取り組んでいます。

----:自動運転技術も人間中心の考え方に寄与するならば取り入れるということですね。その場合、マツダの自動運転技術搭載車はどんな車両、どんな機能を持つクルマになるのでしょうか。

吉岡:たとえば、高齢者になっても自由に移動できるための技術は誰もが価値を認めるでしょう。我々は、そのとき、無人カーで移動できるという点だけでなく、自分でクルマを運転して移動ができることにこだわります。移動サービスの問題は地域や人によって多様で、その解決策も、ADAS、自動運転、シェアリングなどさまざまなはずです。どの技術やソリューションを適用するかは結果です。マツダは、自動運転そのものをゴールとして取り組むことはありません。

したがって、ドライバーレスの自動運転は我々のゴールにはなりません。しかし、ドライバーのトラブル時に安全に停止させるまで走行制御を自動化するような機能やコールセンター等への緊急通報など、そのための自動運転技術の開発は必要だと思います。

----:マツダは、クルマの運転がwell agingに貢献できるのではないかと言っていますね。

吉岡:はい。クルマは人が運転することで、人の能力を活かせることに価値があると思っているので、自動運転だからといって、運転させないことが人のためになるとは考えていません。

自動車の運転は認知・判断・操作の連携とよく言われます。自動運転のような機械による制御の場合、基本的にサンプリングタイム(通常のECUは1ミリ秒)ごとに3つの機能はシーケンシャルな処理になります。人間のニューロンの発火は30ミリ秒といわれていますが、人は3つの操作を同時に、かつ連続的に行うことができます。当然、手足も動かすので、運転というのは脳を含めた全身運動なのです。運転によって心と体を元気にすることが、人間中心の社会貢献だと思っています。

人に負担をかけないよう活用する

----:そのコンセプトは、マツダのADAS機能や自動運転にかかわる制御技術にどのように活かされているのでしょうか。

吉岡:自動運転の要素技術として地図データの処理があります。他に、位置や状況ごとの人の運転操作を理解することも重要です。車重と速度とコーナー半径の計算だけでブレーキやステアリングを自動制御するのでは、ドライバーに無理な姿勢やGを強要することになり、不快感、疲労や恐怖さえ与えます。「人は本来、こういう操作をする」という認識。これができないと自動運転にはなりません。Gベクタリングコントロールや追従型クルーズコントロールでも同様ですが、自動運転もその制御の基本は、人の動きに合わせたGのかけ方、挙動の延長にあるものです。

シャシー制御にしてもアクティブサスにしても、各コンポーネントを制御できるデバイスは増えていますし、個別にできることは広がっています。しかし、それをどう制御すべきか、クルマとしてどう動かすべきかが、一番難しい問題です。例えば、4WSの同じ制御でもベテランドライバーと初心者ではあるべき姿はどうあるべきか、目標をどう設定するかはなかなか判断しにくい問題です。この部分を自動運転の技術開発を通じて鍛えられるのでは、という思いで取り組んでいます。

----:それは「SKYACTIVビークルアーキテクチャー」でも言えることでしょうか。

吉岡:はい。ビークルアーキテクチャーとGベクタリングコントロールの制御は密接に関係しています。ビークルアーキテクチャーは、車の基本的なハードウェアとしてベース性能を決める部分です。各種制御技術は、路面や走行条件による細かい制御やドライバーごとのチューニングを行うソフトウェアに相当します。現在でも、追従型クルーズコントロールの低速制御などで、ベース性能と制御部分の機能配分を行っていますが、人としての操作や動きを組み込むことで自動運転技術に広げていくことを考えています。

人の動きには、普遍的なモデルというものがありますが、一方で個人差、幅もあります。たくさんのデータの平均をとればいいというわけではありません。複雑なモデルの解析にはAIの利用が考えられますが、人の命を預かる制御なので機械学習だけに任せたくはありません。

いずれにせよ、人間中心の考え方に則っても、制御部分でできることはまだたくさんあります。

 

《中尾真二》

この記事をレスポンス(Response)サイトで読む

ADAS車両のCANバスを介するサイバー攻撃実証とその対策などのセミナーが開催されます。詳しくはこちら。

コメントを残す