トラック・バス向け電動化パワートレインの総収益、2020年の10億米ドル弱から、2030年には230億米ドルに到達予測


インテリジェントオートメーション分野の調査を専門とするInteract Analysis社はトラック・バス向け電動化パワートレインの価格トレンドについて欧米を中心に詳細な調査を行い、その結果を英文市場調査レポートとして発行した。当レポートは、パワートレインコンポーネントの収益機会や価格変動についての分析、コンポーネントユニット、パワートレイン、車種、地域ごとの収益と価格の詳細な内訳、サプライヤーの情勢の分析などの情報を提供している。ここでは車種別の電動化動向、高止まりするパワートレイン価格についての考察、車種別市場予測の一部を抜粋して紹介する。

Date:2021/02/17

※このレポートはグロ-バルインフォメ-ションより提供いただき掲載しています。

 

 

自動車の電動化はいまだ黎明期にある。その中で電気トラック・電気バスのパワートレイン市場は、今後10年間で継続的な成長を見せる分野である。気候変動の脅威に直面した各国政府の環境規制の強化を受けて、この分野の技術開発は急速に進展するだろう。現在、電気トラック・電気バス市場の大半を占めているのは小型トラック部門だ。 だが、今後10年間で中型・大型のハイブリッド車やフル電動車が増加し、パワートレインメーカーに大きな収益をもたらすだろう。

 

ハイブリッド車と電気自動車の拡大予測

今後数年でハイブリッド車と電気自動車の双方の商用車市場が大規模に拡大すると予測されている。Eコマース物流の改革者であるAmazonの動向に注目してみたい。Amazonは電気バンのスタートアップ企業Rivianに巨額の投資を行っている。さらに、2030年までに電気バン10万台を調達する契約が結ばれたという。

すべてのクラスの電気商用車の生産台数を予測すると、最も大幅な成長が見込まれるのは2021年である。2021年のEV生産台数は対前年比72%の増加となるだろう。以降2030年まで成長率は一時低下するものの、2030年の総出荷台数は140万台に達すると見られている。これは2019年の26倍に相当する数字である。

 

 

グラフ1は電動化車両の車種別出荷台数の推移を示している。台数ベースで見ると、全期間を通じて小型トラックが市場の大半を占めるだろう。10年後にはバスの台数がほとんど横ばいである一方、中・大型トラックの比重が徐々に高まってゆくことがわかる。Interact Analysis社はパワートレインメーカーにとっての商機はここにあると考えている。

電気トラック、バスのパワートレイン市場の総収益は2020年の10億米ドル弱から急拡大し、2030年には実に230億米ドルに達すると予測されている。台数ベースでは中型トラックや大型トラックの数値はとるに足りないように見えるかもしれない。しかしながらその収益源としてのポテンシャルは非常に高い。

 

高水準の価格推移の裏には重大な価格侵食が隠されている場合がある

平均価格だけ見ればパワートレインの価格下落はそれほど深刻ではないという印象を受けるかもしれない。 しかし実情は異なる。時間の経過とともに技術は進歩し、より高品質で高価な部品が市場に投入されている。にもかかわらず平均価格が上がっていないのは、大型車が量産された結果、部品単価が下落したことが理由である。

メーカーの熾烈な価格競争の結果、ディーゼルの低価格化が進んでいる。同様の傾向は南北アメリカでも見られる。しかし、同地域の全体価格は依然として高止まりしている。

このように、特定の地域、パワートレイン、および車種タイプごとの価格が急速に下落している場合でも平均価格の下落は段階的となる。一見ハイレベルな価格推移の裏に隠された要因に注意する必要がある。

各種コンポーネントの単価は急激に下落してゆくだろう。品質向上を考慮したとしても、2030年の単価は2020年の半分以下になると予測される。一方で、バッテリーパックの価格設定は少し複雑である。

 

バッテリーパックの高値は当面続く見込み

2019年当時、BEVパワートレインに搭載されているバッテリーパックは、車両総コストの59%を占めていた。2030年にはその割合が67%まで上昇すると予測される。2019年時点で全車種のバッテリーパックの平均価格は8000米ドルであった。時間の経過とともに単価が下がるという通常の傾向に逆行して、2025年にはこれが8600米ドルまで上昇すると考えられる。中・大型の電気自動車の市場投入が増えるにつれ、バッテリーパックの平均サイズが大きくなるためである。一方で純粋なバッテリー式電気自動車用のバッテリーパックの平均価格はどうだろう。 こちらは極端な値動きはないものの、2019年の1万4000米ドルから、2025年には1万2000米ドル、2030年には1万米ドルと徐々に下がってゆくだろう。ピュアEVの多くは乗用車や小型商用車で、小型のバッテリーパックしか必要としないからだ。しかし、その他のパワートレイン部品の値下がりに対し、バッテリーパックが高額部品であることに変わりはない。

2020年における燃料電池システムの単価は9万6000米ドルと高額である。現時点で燃料電池システムはほぼバスのみに搭載されている。しかし、2030年にかけて燃料電池が多様な大型車に展開されるようになると、その価格は劇的に下落すると予測されている。燃料電池システムの出荷台数は2030年には5万3000台に増加し、その単価は2019年の平均値の23%まで下がるだろう。

 

バッテリー以外のパワートレイン部品価格の大幅下落

電池パックや電池管理システムなど電池関連機器の価格は2030年まで持ちこたえる一方で、パワートレイン全体では、すべてのカテゴリーで単価が大幅に下落すると予測されている。競争の激化に伴い、価格の下落圧力が働くためである。さらに生産台数が多くなるにつれ、トランスミッション等の機械加工プロセスの低コスト化も進むことも値下げの要因となっている。

一例としてeAxleの平均コストを見てみよう。2019年のeAxleの平均単価は5,000ドルだった。中型車や大型車への普及が進み、生産台数が増加するにつれて、平均価格は下落し続け、2030年には1,800ドルになると予測されている。

フル電動車両の中型・大型トラックのパワートレインの平均コストは、2019年の10万5000米ドルから2030年には5万米ドルに下落すると報告されている。しかし、先に述べたように、多種多様な大型電動自動車の登場によって、パワートレインの全部門の平均価格は横ばいになると考えられる。

 

中型/大型車両用パワートレイン、2030年までに増収予測

2019年と2020年の電動トラック・電動バス市場の収益の大部分は、小型トラックと都市バスによるものであった。小型トラックの導入車両台数はけた違いに多く、都市バスでは1台あたりのパワートレイン単価が高いためである。しかし、この傾向は長くは続かない。小型トラックと中・大型トラックの収益差はどんどん小さくなり、2026年には中・大型トラックの収益が小型トラックを超えるだろう。さらにバスと比較してみよう。中・大型トラックの成長率はバスを上回っている。予測期間中に収益規模でもバスを追い越すことが予想される。

 

 

予測期間を通じて小型トラックの出荷台数は中型・大型トラックをはるかに上回る見込みだ。収益面では2026年に中型・大型トラックが小型トラックを追い抜くと見積もられている。これは大型車の初期費用が高い事に起因するものだ。

Interact Analysis社では他にも興味深い考察を行っている。レポートの詳細は引用元レポートのリンクからご覧いただきたい。見本ページの送付、レポートの試読などもこちらで受け付けている。

 

 

引用元レポート:
市場調査レポート: トラック・バス向け電動化パワートレインにおける価格とアーキテクチャ:商用車向け電動化パワートレインの売上と価格 (gii.co.jp)
発行 Interact Analysis  出版日 2021年01月18日


電気自動車の市場調査レポート | グローバルインフォメーション (gii.co.jp)
調査レポート販売代理店:株式会社グローバルインフォメーション

 

 

 

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