海外主要市場における車両データ共有に対する消費者の認識


コネクテッドカーの普及によって車両データの重要性が高まる中で、自動車技術調査・コンサルティング会社のSBD Automotive(本社: 英ミルトンキーンズ)では、欧(ドイツ)米中の主要自動車市場を対象とし、コネクテッドカーの一連の機能やサービス、データ共有、料金、現在および将来の車両所有、各種モビリティサービスに関する消費者意識調査を実施した。この消費者調査の中から、ここでは特に車両データ共有に対する消費者の認識について一部を紹介する。

2020/1/15

※このレポートはSBDより提供いただき掲載しています


欧・米・中・における車両データ共有に対する消費者の認識

 コネクテッドカー向けサービスは急速に普及しており、2018年には世界で販売された新車の約40%に何らかの形での埋め込み型コネクティビティが搭載された。同分野は今後も成長が見込まれており、2019年には埋め込み型コネクティビティ搭載車の割合が60%台となることが予測される。

 車両がよりつながるようになり、車両データの利活用がOEMにとってますます重要となっている。データ活用により、OEMは現行サービスの強化や新サービス開発が可能となる一方で、データ使用に対する世界的な規制導入の動きや否定的な報道も広がっている。こうした状況の中、適切なデータ戦略を策定するには、消費者が個人情報の共有に対しどのような認識を持っているのかを正しく理解しておく必要がある。

 

車両データ共有に対する受容度

 今回の消費者調査の回答者は車両データの共有に対して消極的な姿勢を示したものの、匿名データであれば共有してもよいとする回答が多く見られた。データ共有に最も大きな懸念を示したのは中国(26%)で、続いてドイツ(21%)、米(19%)という結果となった。

 

 

 車両データの共有に消極的である理由としては、個人データの取り扱いへの懸念や利用目的が不明確、マーケテイングや広告目的で利用されたくない、などに回答が集まった。

 

 

消費者のマインドは変えられるのか?

 

 今回のSBDの調査では、見返りは求めていないという回答が3ヵ国平均で59%にのぼるという結果となった。

 


 ただし、サブスクリプション型コネクテッドカーサービスに関する項目で、こうしたサービスを無料で利用できるとしたら匿名化された車両データを共有するかとの質問を行ったところ、全回答者の約8割が「共有する、または共有を検討する」と回答した。またスマートシティの構築などの社会問題や輸送問題の解決に役立つとしたら、匿名化された車両データを共有するかとの質問に対しても、およそ8割の回答者が「共有する、または共有を検討する」と答えている。

 これらは前述の調査結果と対照的な回答にも見えるが、消費者にとってデータプライバシーは重要な要素であり、データ利用に関する明確な説明と合意を含め、データの匿名性や適切な管理が担保されれば、車両データの共有を前向きになる可能性は高いと言える。OEMとしては、データの有効活用を推進するためにも、データ取り扱いの透明性を高めユーザーへの理解を求める取り組みが求められる。

 


SBDについて
英国を本拠とする自動車技術の調査・コンサルティング会社。1995年の創業以来、日本、欧州(英国とドイツ)、米国、中国の拠点から自動車業界に携わるクライアントをグローバルにサポートしている。クライアントは自動車メーカー、サプライヤー、保険業界、通信業界、政府・公的機関、研究機関など自動車業界のバリューチェーン全体にわたる。調査対象エリアは、欧州、北米、中国、ブラジル、インド、ロシア、東南アジアなど世界各国の市場を網羅。自動車セキュリティおよびIT、コネクテッドカー、自動運転などの分野において調査を実施、各種レポートやコンサルティングサービスを提供する。>>ウェブサイト

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