MWC 2024:自動車業界のトップトレンド – AI、5G/6G、スマートデバイス、協業/提携


毎年バルセロナで開催される、MWC Barcelona(旧称「Mobile World Congress」)はモバイルテクノロジー業界の世界最大級のイベントで、電気通信会社、テクノロジー企業、家電メーカー、ソフトウェアプロバイダー等、様々な企業が最新の革新技術を持って集結する。カンファレンスプログラムではモバイル業界に関係する様々な最新テーマの講演が開催されることでも知られている。

2024年のMWCは2月26日から29日までバルセロナで開催され、2,700社以上の企業が参加した。SBD Automotiveでは、今回のMWCを視察し、カンファレンスの内容や主なプレイヤーの展示内容、全体を通して見えたトレンド等についてまとめたイベントレポートを発行している。ここでは、このイベントレポートからのキーポイントを紹介する。

 

2024/04/24

※このレポートはSBD Automotiveより提供いただき掲載しています

 

まず、今回のMWCでの主なトレンドとしては、AI、5Gおよび6Gコネクティビティ、スマートデバイス、協業や提携の4つが挙げられる。

AIについていえば、生成AIが展示会場のいたるところで紹介されており、サポート対象のユースケースも音声アシスタント、カスタマーサポート用のチャットボット、画像作成、コンテンツ作成、従業員のトレーニング等、多岐にわたった。また、ウェアラブル、PC、スマートフォン、自動車などのコネクテッドデバイスなど、エッジにおけるAIの活用を強調する出展者も多く見られた。エッジでAIを活用することで、クラウド処理に比べて持続可能性が向上し、レイテンシーが短縮され、セキュリティが強化される。

 

 

5Gでは、5G Advancedや5Gプライベートネットワークといったテクノロジー、5Gの収益化の機会についてデモが行われたほか、事業者がネットワークを完全に制御できる非公開のネットワークである5Gプライベートネットワークが、Vodafone、DT、China Mobile、Qualcomm、ZTE、Orangeから紹介された。5Gプライベートネットワークを自動車の生産ラインで使用することにより、車両のファームウェアを更新する際の「データシャワー」が容易になるというメリットがある。

 

 

生成AIを活用して使用体験を向上させたスマートデバイスのコンセプト、プロトタイプ、製品などの展示も多数見られた。

また、MWC 2024では、合弁事業Global Telco AI Alliance(GTAA)の創立総会も開かれた。GTAAの設立メンバーは、Deutsche Telekom、Etisalat &e、Singtel、SK Telecom、SoftBankの大手通信会社であり、目的としては通信事業者向けに大規模言語モデル(LLM)を開発し、デジタルアシスタントやチャットボットによる顧客とのやり取りを改善することとされている。これらのLLMは通信会社のニーズに特化し、一般的なLLMよりもユーザーの意図をより良く理解できるものとなると見られる。

様々な観点に焦点をおいた興味深いカンファレンスが開催されたが、その一つ、スマートモビリティサミットでは、AT&T、Volvo、Harman等の登壇者が、今後、セルラー+5.9GHzと生成AIを使用したコネクテッドインフラが登場するだろうとし、また、ソフトウェアディファインドビークル(SDV)では常時接続が必要となるため、さらに包括的なコネクティビティが求められ、コネクティビティの重要性が増していくとの見解が示された。5Gの進歩とC-V2はユーザーエクスペリエンスを一変させ、超低遅延を必要とする安全性と利便性のユースケースの道が開かれようとしているが、これを達成するには、5Gインフラやソフトウェアディファインドビークルに加え、オープンRANのようなソリューションが必要になるとの意見が交わされた。

 

 

5Gに焦点を当てたパネルディスカッションでは、データのモニタリングと分析に生成AIを活用する動きが紹介され、技術志向を強めている通信事業者各社が、ユーザーとの協業、データ分析、様々な業界での5Gを活用したユースケースの開発に力を入れていることが示された。5Gと生成AIの分野では、今後、エッジコンピューティングへの移行やオープンなエコシステムの開発が進み、ユーザーエクスペリエンス、プライバシー、セキュリティが重視されるようになることが強調された。

 

SBD Automotiveでは、今回のMWCやCESを含め、イベントレポートシリーズとして年間を通じてレポートの発行を予定している。レポートでは、各イベントの最新情報やトレンド、重要なトピックを掘り下げて解説するとともに、これらの発表が自動車業界にどのような影響を及ぼすかを考察する。

2024年5月15日(水)に開催される第33回ReVisionウェビナーでは、車の新しい価値創造にデータやAIをどう活用していくか、という観点で講演およびディスカッションが予定されており、SBD Automotiveの大塚真大が、上記のMWCやCESから見えたトレンドやキープレーヤーの取り組みや方向性を含めて、解説する。

 

SBD Automotiveについて
英国を本拠とする自動車技術の調査・コンサルティング会社。1995年の創業以来、日本、欧州(英国とドイツ)、米国、中国の拠点から自動車業界に携わるクライアントをグローバルにサポートしている。クライアントは自動車メーカー、サプライヤー、保険業界、通信業界、政府・公的機関、研究機関など自動車業界のバリューチェーン全体にわたる。調査対象エリアは、欧州、北米、中国、ブラジル、インド、ロシア、東南アジアなど世界各国の市場を網羅。自動車セキュリティおよびIT、コネクテッドカー、自動運転などの分野において調査を実施、各種レポートやコンサルティングサービスを提供する。 >>ウェブサイト

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