次世代のクルマに求められるユーザーエクスペリエンス(UX)を考える ―5月開催ウェビナーレポート―


第12回ReVisionウェビナー「次世代のクルマに求められるユーザーエクスペリエンス(UX)を考える」が5月27日に開催された。講師は、国立研究開発法人産業技術総合研究所自動車ヒューマンファクター研究センター特命上席研究員の赤松幹之氏と、ニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパン株式会社のプロフェッショナルサービス、シニア・プリンシパル テクニカル・エクスパートの石川泰氏が務めた。

Date:2019/06/27
Text :住商アビーム自動車総合研究所
プリンシパル 川浦 秀之

 

 

「自動運転とモビリティ・サービス発展に必要なUXとは」

 最初に赤松氏がプレゼンテーションを行い、米自動車技術開(SAE)による自動運転のレベル分けに触れた後、自動運転に関するHMI (ヒューマン・マシン・インターフェース)について述べた。ドライバーと自動運転システムとの間で運転の交代が発生する自動運転レベル2・レベル3では、ドライバーが「システムができること、できないこと」を正確に理解していないと、交代要求があった時に適切な対応ができない。赤松氏は、自動運転システムの状態を分かりやすく伝えるHMIの必要性を説き、ヘッドアップディスプレーとAR(拡張現実)・MR(複合現実)の技術を活用し、実画像にセンシングしたデータを重ね合わせて表示することなどの重要性を語った。

 レベル2・レベル3の自動運転では、ドライバーは常に「運転を代わる」ことを意識している必要があるが、人間は「何もせずに監視している」(刺激が足りない状態で何かをやり続ける)という行為が苦手で、自動運転中に気がそれたり、覚醒度が下がったりすることがあると指摘。交代要求があった時にドライバーをいかに運転できる状態に引き戻すかは検討課題になっているとし、ドライバーの状態を観察するドライバーモニターシステムの必要性も強調した。

 また、MaaSについても触れ、収集された情報により多様なサービス提供が可能になる世界では、自動運転やコネクティビティを利用してどのようなサービスを目指すかを考える必要があると述べた。重要な視点として挙げたのは、「ユーザーの要求は十人十色ではなく一人十色、同じユーザーでも置かれている状況によって価値を感じる対象は変わってくる」という点で、その時々のユーザーの状態を観察し、ユーザーが必要とするサービスを提供することが必要と説いた。

「進化するAI音声アシスタントの最新技術」

 続いて石川氏がプレゼンテーションを実施し、音声インターフェースの現在地点と、より良いUXを生み出すために、これから何に注力すべきかをを提示した。

 石川氏によると、過去の限定的・階層的な音声コマンドは、その使い勝手の悪さなどから、クルマに搭載されているにもかかわらず利用されないこともあったという。しかし、その後の自然言語の理解技術・音声認識技術・信号処理技術の大幅な進化により、今では「近くのイタリアンレストランを教えて」といったコマンドも受け付けられるようになっていることを紹介。さらに、ナビの目的地設定、施設検索、音楽の検索等が、走行している車室内の騒音の多い環境下でも高い認識率で可能になっていることも紹介した。

 人工知能(AI)については、深層学習の発展に伴い、音声信号を文字情報にし、文字情報から意味を抽出するという技術も発展し、学習するためのデータが企業活動における大きな資源になっていると述べた。さらに、MaaS時代の音声認識のあり方について、自動運転時代に求められるサービスは「状況依存性」と「一貫性」が同時に要求されると説明。この2つを両立させ、安全快適な移動に対して様々なサービスがどう関連し合うのかを考えていくことで新しいユーザー体験を生み出すことができると語った。

 また、ユーザーの要求や置かれている環境をシステムが理解し、ユーザー一人ひとりに最適化したサービスを提供することが重要であると強調。一方で、考慮すべき点は、データの所有権およびプライバシー保護であるとも述べた。その上で、今後生まれてくる新しいサービスはニュアンス・コミュニケーションズが持つ個別技術だけでは成立しないとし、多くのパートナーや研究機関と共に、ユーザーの接点としてのHMI、AIアシスタント、音声認識を通じて、MaaSの世界を作っていきたいと語った。

 

次世代に求められるUXのあり方について議論

 両氏のプレゼンテーションの後、視聴者から寄せられた質問や、視聴者ライブ・アンケート結果へのコメントも交え、ディスカッションが行われた。

 石川氏から赤松氏に、同氏が長く研究していた「サービス工学」について、サービス設計側のあり方について質問。赤松氏は「うまくいっているところは、提供する側の意欲が非常に高い。『人を幸せにしよう』という気持ちを持てるかどうかが大きな分かれ目になっている。技術というより、基本的な態度が大事」と述べた。また、MaaS時代のコラボレーションについて、「自分が何が提供できるかということをよく理解できていることが肝要。自分の立ち位置を良く理解するということが、うまくコラボレーションを行うためには必要」と考えを語った。

 石川氏は「AIのシステムはクラウド側にあるのかエッジ側にあるのか」との視聴者からの質問に対して、「目的地を設定するサービス、音楽を聴くサービスならば共通性を考えてもクラウドがいい。一方で自動運転を考えると、クルマの中にある各種のセンサー情報を全てクラウドに上げて状況判断するということは到底、無理な話。リアルタイムにモニタリングされている状況を判断して、最終的にやりたいことを決めるならば、当然システムはエッジ側にあるべき」と述べた。

 また、現在のデータを集約して使っていく上での課題について、「どんなサービスの為に何の情報が必要なのかということを少し整理をする必要がある」と指摘し、さらに「プライバシーの問題をどうやって維持するのか、どういう情報を(クラウド・システム等に)上げてよいか、上げる時に個人を特定しない上げ方は可能か、などを一緒になって考えていきたい。新しいサービスを作る人が核になってデータ流通の仕組みを考えていければ」と語った。

 このほか、視聴者に対して、「ユーザーとして今後の移動体験に最も望むことは何か」「これからのUX設計において最も重要なポイントはどこか」などの選択式リアルタイム・アンケートを実施し、こうした質問に対する視聴者のコメントも含め、広範なディスカッションが繰り広げられた。

 

 

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