インドの調査会社BIS Researchによると、電気自動車市場は2017年から2026年にかけてCAGR28.3%で成長し、同社の調査結果をまとめた調査レポート「世界の電気自動車 (EV) 市場の分析と予測」の中から一部をご紹介したい。
Date:2018/04/11
Text:株式会社グローバルインフォメーション
電気自動車(EV)はすでに19世紀の初期には考案されていたが、本格的にその商業化がすすんだのはここ数十年のことである。自動車OEMが様々な価格帯で電気自動車を販売し始めたこともあって、過去5年間で電気自動車の売上は急速に拡大した。その保有台数は2012年の数千台から現在では200万台以上と飛躍的な伸びを見せており、今後も成長が続くと予測されている。
各国政府の取り組みもこの成長に寄与していると言えるだろう。例えば、欧州などでは20年以内にガソリン車の新規販売を禁止するとしており、今後そのような国はますます増加すると見られている。また、電気自動車の普及を語る上でテスラの存在を忘れてはならない。同社がバッテリー駆動の高級車、SUV、ロードスターなどを市場に投入したことで、EV市場は初めて商用化のクリティカルマスに達したと言えよう。フォルクスワーゲンやトヨタなども電気自動車部門のポートフォリオを拡大し、この動きに追随しようとしている。選択肢が増えたことにより電気自動車に関心を持つ消費者はいっそう増加した。また地球規模の温暖化が進行していることから、環境に優しいモビリティを求める声も大きくなっている。
世界各国における取り組みや各社の製品開発なども寄与して、近い将来EVは自動車市場のかなりの部分を占めることは間違いない。また、現在、様々な公共機関で電気自動車の採用が検討されている。これが実現すると一般の認知度はさらに高まり、電気自動車の普及はますます加速するだろう。
電気自動車市場の拡大に貢献する要因は三つある。
● 厳しい規制の導入
● 低燃費車へのニーズの高まり
● 政府による普及への取り組み
一方でその成長を抑制する要因は以下の二つである。
● 導入コストの高さ
● 充電時間
電気自動車の保有台数は2016年の段階で89万1000台、CAGR28.3%で推移し2026年までには1076万台以上に拡大すると予測されている。主要コンポーネントメーカー同士、あるいは自動車OEM間の協力関係の構築がこの成長に寄与するだろう。あるいは、バッテリー価格の下落、充電インフラの改善なども市場の拡大を牽引すると見られている。
テスラ(米国)、BYDカンパニーリミテッド(中国)、フォルクスワーゲンAG(ドイツ)、日産自動車、三菱自動車工業などのOEM、 あるいはサムスンSDI(韓国)、オートモーティブエナジーサプライ、LG化学(韓国)、パナソニック、コンチネンタル(ドイツ)などの部品メーカーの間では事業の拡および新規参入への抑止効果を目指して新製品の発売および提携関係の構築が盛んに行われている。
このように世界の電気自動車市場は、政府規制のパラダイムシフト、消費者の環境意識の高まりを追い風として基本的には成長基調にあるといえるだろう。このレポートでは、電気自動車の市場規模を純粋なバッテリー式の電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)に分けて分析している。
Figure 3 電気自動車台数シェア予測BEV、PHEV別 2016年 2026年
出典: 二次調査、インタビュー、BIS Researchの分析による)
BEVの市場シェアは2016年の時点でもすでに63.1%と高く、さらにはPHEV以上の成長率で拡大すると見込まれている。バッテリー式であるためBEVはガソリンを消費せず汚染物質の排出もゼロである。またBEVにはエネルギー消費を最小限に抑える機能が豊富に備わっており、充電インフラの改善、消費者の環境意識の高まり、航続距離の伸長などの要因なども相まって、BEV市場の拡大が促進されるだろう。世界のBEV市場は30.2%のCAGR で成長し、2016年の56万2640台から2026年には789万8820台まで成長する見込みである。
政府や自動車OEMの取り組みもBEV市場の成長を加速させている。たとえば、複数の国が参加する電気自動車イニシアチブでは2030 年までに乗用車、商用車を合わせて電気自動車の市場シェアを30%まで増加させることを目標として掲げている。また、2016年におけるテスラのモデルS、日産リーフの好調な売れ行きも電気自動車の市場シェア拡大に大きく貢献した。
Figure 4 電気自動車コンポーネント別市場 2016年 2026年
出典: 二次調査、インタビュー、BIS Researchの分析による
一方で電気自動車のコンポーネント別の市場はどうなっているだろうか。EVの心臓部とも言うべきバッテリーの市場規模がやはり大きく、2016年時点の市場価値は150億米ドル弱、コンポーネント市場の68.8%を占める。電池は高額なユニットであるため自動車本体価格に大きなインパクトを与える要素となる。電気自動車向けバッテリーの市場は2016年における149億9000万米ドルからCAGR20.1%で成長し2026年には実に939億4000万米ドル規模まで成長するだろう。
コンポーネントの中でも回生ブレーキの市場は予測期間中、最も急速に拡大すると見られている。政府官庁による燃費への厳しい規制、エネルギー効率の高いシステムへの需要などがその後押しをするだろう。回生制動には燃費向上だけではなく、摩耗を最小限に抑えるため制動システムの負担が少ないという利点もある。回生ブレーキの世界市場は2016年の16億8000万ドルから25.1%のCAGRで成長し、2026年には154億ドルに達すると予測されている。
Figure 5 電気自動車台数シェア予測車種別 2016年 2026年
出典: 二次調査、インタビュー、BIS Researchの分析による
電気自動車の市場を乗用車と商用車に分類してみると、やはり前者の占める割合が高くなっている。2016年の時点で乗用車のシェアは84.7%、今後も高い成長率を維持するだろう。政府によるイニシアチブ、都市化、可処分所得の増大などがこの拡大を牽引する要素となる。適切な道路インフラが整備されれば電気自動車の普及はさらに進むと見られている。
バッテリー駆動の乗用車の保有台数は2016年の75万5070台から29.1%のCAGRで拡大し、2026年には972万1100台に達すると思われる。
今後、電気自動車の普及を牽引するのは何と言っても自動運転機能を備えたEVであろう。最近の展示会でも特に商用車での応用を中心に自動運転機能を持つEVの発表が相次いでいる。対話機能を備えたAIなど魅力的なガジェット、サービスが導入されれば、電気自動車であるか否かを意識せず、付加価値の部分で消費者がクルマを選択する時代がやってくるのかもしれない。
(出典元となる調査レポート「世界の電気自動車 (EV) 市場の分析と予測」インド調査会社BIS Research発行)
◆このコンテンツは株式会社グローバルインフォメーションよりご寄稿いただいたものです。
本レポートの詳細はこちら
https://www.gii.co.jp/r/617067
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