レベル4以上の自動運転車の販売台数 2035年に4330万台に


レベル4以上の自動運転車の販売台数 2035年に4330万台に達する

2017/9/9

 米国調査会社Navigant Researchによると、自動化レベル4以上の自動運転車の全世界における販売台数は、2020年から2035年にかけて74.3%のCAGR (年間複合成長率) で推移し、2035年には4330万台に達すると予測されている。同社の調査結果をまとめた調査レポート「自動運転車:世界における消費者向け・商業向け市場の予測 2017-2035年」の中から一部をご紹介したい。

※この記事は株式会社グローバルインフォメーションより米国調査会社Navigant Researchのレポート抜粋を提供いただき、掲載しています

概要

 自動運転技術は今後もその機能性をますます向上させてゆくと思われる。現在、一般車、商用車の両方のセグメントで提供されているのは標準的あるいは安価なレベル1自動運転システムである。より先進的な機能を有するレベル2のシステムは現時点では一部の高級モデルにのみ搭載されている。また、高度に自動化されたレベル3、4の自動運転車はパイロットプログラムなどで活発にテストされている最中である。公道における自動運転車の商業運行については各国の政府官庁で議論が進展中で、一部ではこれを認可する法整備が進みつつある。レベル4の自動運転車はより多様な条件下での自動運転を可能としており、さらには完全自動化のレベル5に進化してゆくと考えられている。

 自動化運転は社会に様々なベネフィットをもたらすだろう。例えば、長距離運転がより安全に行えるようになることは確実である。様々なレベルのドライバー支援を提供することから始まり、やがてはドライバーに代って自動運転車が航行の全責任を負うまでになると思われる。さらに、完全自動運転車は他にも多様な潜在性を持っている。自動運転車はオンデマンドで利用可能な地元の交通手段として共有されることになるだろう。こうしたシステムは人口密度の高い地域でまず導入されると思われる。個人保有のクルマ、あるいはタクシーよりも安価で、かつ公共交通機関よりもずっと便利に自動運転車を利用できる日が来るだろう。

 

自動運転車市場全体の予測

 Navigant Researchでは自動化された乗用車の導入は2020年に始まるが、目に見える成長を見せ始めるのは2025年以降であると予測している。2020年から2025年の期間は、自動運転車が期待通りの利益をもたらすか、その実用性じっくりと見定めるために費やされるであろう。結果として自動運転車の商用市場は最初の数年はゼロに近いベースから始まる。だが、いったん有用性が認められると自動運転車の普及は着実に進行し、その後の成長はかなりの速度で進むと思われる。

 自動運転車のテスト走行は世界中の様々な場所で行われており、地域別の進展状況に大きな差は見られない。

 商用車における成長パターンも一般車と類似の傾向をみせると思われる。ただし成長に転ずる時期に3~5年のずれがあり、かつその時期は車種によっても大きく異なるであろう。また一般車で完成された技術は随時、商用車にも展開されてゆくと思われる。ただしその応用は車両の種類、そのサイズ、重量あるいは典型的な利用サイクルを慎重に考慮した上で行われることになる。

 

消費者向け自動運転車の市場予測

 全世界における乗用車の販売台数の拡大に寄与するのは主にアジア太平洋であることが明らかになっている。ラテンアメリカ、アフリカ中東地域においてもそれなりの伸びはあるものの、アジア太平洋地域の市場規模と比較すればその影響は微々たるものと言えよう。北米及び西欧といった成熟市場においては逆に多少の縮小傾向さえ見られる。そういった地域を全てあわせた全世界における複合年間成長率は1.7%となっている。

 

 2024年以前には、自動運転車の販売台数は微々たるものでしかない。2024年以降になって初めてその技術が成熟し、市場として着実な成長が見られるようになる。2020年から2035年の各全世界における成長率は複合年間成長率74%となっている。これは各地域の成長率60%から134%を全て合計した数字である。2035年における自動運転車の販売は全世界の乗用車販売台数1億2200万台中、4300万台になると予測されている。

 自動運転車の導入は2021年前後に開始されるが、その後しばらくは自動運転車の大量普及は起こらないとされている。一年余りの移行期間にカーシェアリングで移動ニーズを十分に満たせることがわかると、まず都市部の住民が個人所有からカーシェアリングへ移行し始める。この傾向を受けて2026年には全体の車両保有台数が減少に向かうようになる。大都市における交通問題を抱えるアジア太平洋地域における減少が最大になるとされている。2032年には世界の総車両台数は2017年を下回るレベルにまで減少するだろう。

 

商用自動運転車の市場予測

 全世界における商用の自動運転車の販売台数は2017年の480万台から2035年には730万台に拡大すると見られている。ここでもアジア太平洋地域が占める割合は大きいものの、東欧、中東アフリカ地域などもまた高い成長率を見せると予測されている。2017年から2035年の期間における複合年間成長率は2.3%となるであろう。



 商用車市場の成長を牽引するのはトラック市場で、商用車の成長のほとんどはトラック市場の拡大によってもたらされる。トラックに比較するとバスが全体に占める割合は相当に低い。自動運転車による代替交通手段が普及すれば乗り合いバスへの需要は潜在的に減少してゆくはずだが、このモデルではその減少分を考慮していない。またここでは、ドローン、自動化車両、小型車両などの代替技術による輸送市場への影響も排除されている。


車種別の市場予測

 ここでは商用車を四つのカテゴリに分類して2035年までの予測を行っている。自動運転車の普及が始まるタイミングは各カテゴリで多少の差はあるものの、ほぼ同じ時期となるだろう。乗用車向けに開発されてきた自動運転技術が大型商用車向けに応用されることになる。商用車の一台当たりの平均コストは一般車よりも高い。すなわち自動運転用機器が商用車のコストに占める割合は乗用車と比較して相対的に小さくなる。衝突事故の回避など自動運転の利点が経験的に証明されれば、この費用対効果の高さが有利に働くことになるだろう。

自動運転バス地域別市場予測
 自動運転中型バスの市場はアジア太平洋地域においてもっとも大きくなると予測されている。将来期待されている売上の大部分がこの地域であがることになるだろう。しかしながら、各地域の成長率にはそれほど差はない。全世界のバス市場は複合年間成長率61%で推移し、2029年以降は急拡大を見せるとされている。自動運転大型バスの販売は複合年間成長率66%で拡大し、2035年には20万台を超えるだろう。中型、大型どちらのセグメントでも新興国における力強い成長が期待されている。

自動運転トラック地域別市場
 中型トラック向け自動運転技術はアジア太平洋及び北米における成長が期待されている。予測されている複合年間成長率は92%と驚異的である。中型トラック市場が急拡大に転じるのはバスより1、2年遅れ、2030年から2031年になると思われる。北米、アジアを追いかけるその他の新興国でも市場の成長率自体は悪くない。だが全体の市場規模が小さいことから販売台数としてはそれほど伸びないとされている。

 大型トラック市場は商用車の中でも最大のセグメントとなっており、自動運転車の販売台数は2035年までに90万台に達すると予測されている。長距離の物品輸送は自動運転の主要な市場のひとつである。予測期間を通じての複合年間成長率は89%とされている。

 

地域別市場

 全世界における商用車全体の成長率は79%と予測されている。2017年に100台程度でしかなかった販売台数は2035年には実に190万台にまで急拡大する。地域別に見ると、全体の64%を占めるアジア太平洋地域がトップ、続いて北米19%、西欧7%、その他新興市場が10%となっている。

 販売台数を車種別に見ると大型トラックが全体市場の47%、中型トラック35%、大型バス11%、中型バス8%とトラックの優勢が見て取れる。

 


 車種ごとに自動運転車がどのくらい普及しているかを出してみよう。バスの普及率がトラックのそれよりも高いことがわかる。自動運転バスの普及は都市部に集中している。このため機能の焦点は低速での運行かつ衝突の防止ということになる。自動運転中型バスは混雑時の効果的な相乗り手段として導入されるであろう。

結論

 自動運転車が世界的に導入されることに疑問を持つものはもはやいないだろう。議論の焦点は、自動運転車が大量に導入されるのはいつか、そして、それが未来の交通にどのような影響を与えるかといったことに移りつつある。これまで様々に想定されてきた未来の交通システムは、自動化されたクルマが多種多様な目的にほぼ休むことなく継続的に利用されるという将来像に集約されてゆくと思われる。そのような世界を考えた場合、従来の予測モデルは既にその有効性を失っていると言えよう。自動化車の利用率が最大化すれば、人、モノの輸送は全てこの安価で効率的な手段によってまかなわれるようになるだろう。長期的には車両ごとの運行距離が延びたとしても車両台数自体は減少し、必要とされる駐車スペースもまた劇的に縮小するだろう。特に人口の多い都市部ではさらにこの傾向が強くなる。

 商用車において自動化技術が採用される時期は一般車より少し遅れることになるだろう。しかし、いったんその機能が導入されればその後の増加率は一般車より高くなると予測されている。自動運転バスの早期普及が見込まれているが、全体的な台数としてはトラックに及ばない。
センサー技術、処理用ハード、ソフトの機能は強化される一方でそのコストは下がり続けるだろう。こうした改良は一マイル辺りの走行コストが目標値に達するまで続けられるだろう。一般大衆の自動運転車への認識は安全性、利便性、コストパフォーマンスなど、様々な要素によって影響を受ける。このため継続的なテスト、評価、改善をあらかじめ組み込んだ生産計画を立てることが必要とされている。

 技術的な側面以外でも自動運転車の普及と市場成長に不可欠な要素がある。国家レベルの法整備である。テスト走行で安全性に問題がないことが実証された後には自動運転車が全体を監督するドライバーなしの状態で公道を走行することを許可する法律が必要となるであろう。また、自動運転車の早期採用を考えている自治体はOEMや自動車メーカーのテストサイトを地元に誘致するために自動運転車専用ゾーンを設けることを考慮すべきである。国家、あるいは地方自治体は個人、商用車のドライバーの自動運転技術への投資を促進する意味で自動運転車向けに専用レーンを設ける、速度制限の上限を緩めるなどの優遇措置を検討すべきである。

 自動運転車は存在自体が華やかで夢の結晶のように見なされることも多い。世界からの注目を集める2020年の東京オリンピックは自動運転車の魅力をアピールする上でうってつけの機会になると思われる。実際にこのイベントを機に自動運転車のお披露目を目論む自動車メーカーも多いだろう。一方で自動運転車が日常的に普及するまでには地道な信頼性の構築や何度もの法改正が必要となると思われる。事故が起こった場合の責任の所在などまだまだ取り組むべき問題は多いと言えよう。

(出典元となる調査レポート:「自動運転車:世界における消費者向け・商業向け市場の予測 2017-2035年」米国調査会社Navigant Research発行)

 

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