先端運転支援システムの市場 2021年までに591億米ドルに


米国調査会社BCC Researchによると、世界の先進運転支援システム (ADAS) の市場規模は、2016年から2021年にかけて19.9%のCAGR (複合年間成長率) で推移し、2016年の238億米ドルから2021年までに591億米ドルへ達すると予測されている。同社の調査結果をまとめた調査レポート「先進運転支援システム (ADAS):技術および世界市場」の中から一部をご紹介したい。

2017/10/18

※この記事は株式会社グローバルインフォメーションより米国調査会社BCC Researchのレポート抜粋を提供いただき、掲載しています

概要

 走行安全性への配慮、及び燃費効率のよいクルマへの需要の高まりを背景にADAS市場は今後急速に拡大してゆくと見られている。本調査レポートでは、ECU、マイクロコントローラ、各種センサ、半導体部品、ソフトウェアとそのアルゴリズム、マッピングシステム、電気系統などのADAS関連製品の販売を足しあげて全体の市場規模を算出している。

 過去数年、消費者の走行安全性に対する懸念は高まる一方で、ADAS機能を備えたクルマ、特に量販車に対する需要もそれに伴い拡大してきた。自動車メーカーは2021年までに量販車に対する需要が18%から20%拡大するという見込みを持っている。量販車にはこれまでも顧客の嗜好に合わせて様々な追加機能が実装されてきた。ADASへのニーズが高くなれば、自動車メーカーは必ずその動きに追随しようとするだろう。事実、コンチネンタル(Continental AG)やオートリブ(Autoliv)といった企業はOEM契約を締結し、安価なADASシステムの開発製造に着手している。こうした取り組みによってADASの価格は徐々に下がり、同時に規模の経済が達成しやすくなると思われる。また、先端的な安全性能を備えた中・小型車に対する消費者ニーズの着実な増加に合わせて、低価格帯(小型車)へのADAS導入も少しずつ進むと見られている。

 各種団体や政府官庁などによる取り組みもまたADASの普及を促進している。例えば、米国運輸省道路交通安全局によるセーフカープロジェクトは北米地域におけるADAS採用を大きく進展させ、市場拡大に大きく貢献した。また連邦運輸省連邦自動車運輸安全管理局は乗用車、バス、トラックによる死亡者数、事故数を減らすためADASの普及に積極的に取り組もうとしている。

 一方、欧州は世界を代表する自動車市場であると同時に最も革新的な取り組みを行っている地域である。世界金融危機以降、欧州の自動車業界は大きく再編された。期を同じくして、欧州においてADASシステムが急速に浸透し、幅広い採用が進んだ。欧州のADASメーカーは世界における競合優位性を保つために常に進化を続けている。

 センサ系統におけるソフトの不具合の増加によりADASシステム市場は現在のところ一時的に陰りを見せている。また、その価格もADASシステムの普及を妨げる原因の一つである。しかしながら、ハイブリッド車、電気自動車の急速な普及、及び自動運転車の成長と歩みを合わせる形でADAS市場は今後もかなりの速度で成長を続けてゆくだろう。

 ほとんどのADAS機能が電子部品によって制御されている。したがってADAS技術の開発の方向性を規定しているのは国際安全規格IEC 61508の個別適用規格 ISO 26262などである。

 

調査結果のサマリー

 一般消費者の安全走行に対するニーズ、また安全性能を要件とする規制などがADAS市場拡大の主要要因である。

  • 高級車販売の急伸がADAS市場の更なる拡大を後押しすると見られている。
  • 厳しい安全基準がいくつかの国で新しく採用される、あるいは商業車向けに新たな安全性能が追加されることによりADAS市場に新たな展開がもたらされる。
  • 2016年時点で33%のシェアを持つ欧州が全世界のADAS市場をリードしている。
  • 欧州最大の需要国はドイツで2021年にかけて複合年間成長率24.1%で成長すると見込まれている。
  • 北米地域は欧州、アジアに次ぐ30%の市場シェアを占める。中でも自動車製造の一大拠点となっている米国がカナダ、メキシコと共にADAS市場を牽引してゆくだろう。
  • 日本、中国といった自動車ハブを持つアジア太平洋地域はADAS市場における新たな市場機会を提示する。インド市場における急伸がこの地域の成長を下支えするだろう。安全性に対する関心が高まるにつれて、ADASシステムを標準装備とするCセグメント車に対する需要も拡大すると見られている。特にインドにおけるADAS市場は高級車の人気も相まって2021年まで複合年間成長率19.4%で拡大すると予測されている。
  • 2016年におけるアジア太平洋市場の85%を占めるのが日本、中国、韓国である。この三カ国においては厳格な安全基準に後押しされる形でADAS市場の裾野が広がっている。
  • サウジアラビアにおけるADAS市場は高級車の拡販と歩調を合わせて格段の伸びを見せるだろう。
  • 2016年におけるADAS市場を機能別に分類するとパーキングアシスタンスが全体の23%となっている。

 過去数年でADAS平均販売単価が劇的に値下がりした結果、ADASへの需要はますます高まりつつある。単価の引き下げに伴い、より多くの自動車メーカーがADASを基本装備として取り入れるようになった。また、ADASの値下り分が車体価格に反映されることによって、ADAS機能を持つクルマを購入する消費者の裾野が広がり、さらに市場の成長を加速させている。アフターマーケットを見ても同様の傾向が見られる。消費者がより安価になったADAS製品を購入する機会は今後いっそう増えてゆくだろう。

  • 走行安全性、効率的な交通流管理の重要性が高くなるにつれて、交通標識認識システム市場は拡大してゆく。2016年から2021年にかけてその成長率は25.5%と目されている。
  • 可変配光前照灯(AFS)の人気はいったん落ち着きを見せ、ADAS製品の中では低めの成長率12.0%で推移することになる。
  • 技術別に見た場合、レーダーセンサーがADAS市場を牽引する存在であることは間違いないだろう。レーダーセンサーは多岐にわたる機能、応用先といった特性から市場を拡大し、2021年にはADAS市場の57%以上を占めると予測されている。
  • デンソー、コンチネンタル、アイシン精機、デルファイ(Delphi)、ヴァレオ(Valeo)は革新的な製品を送り出すことで今後も主導的なプレイヤーとしての地位を維持すると思われる。
  • インテル(Intel)のモービルアイ(Mobileye)などの新規参入組はアンメットニーズの掘り起こしによる収益機会を追い求めて拡大戦略に集中している。

 

タイプ別テーブル 2021年までの世界のADASマーケット(単位 百万米ドル) 

 

最後に

日本は世界的な自動車メーカーのお膝元として注目されている。その代表格であるトヨタ、日産、ホンダなどは米国や欧州向けに発売される新車でADASシステムを目玉として攻勢をかけようとしている。一方で、ADAS機能の中核を担う部品メーカーとしては海外勢の動向が注目される。特にトヨタがカローラのセンサーモジュールを系列企業ではなくコンチネンタルに発注したことは記憶に新しい。他にもボッシュ(BOSCH)、ZFなどが日本の自動車メーカーをターゲットとして積極戦略を打ち出している。既存の部品メーカーだけではなく、人工知能、バーチャルリアリティ、IoTなど他業種から自動車市場に打って出ようというインテルのような企業もあってADAS市場は混戦の様相を呈している。

本調査レポートは流動的な市場を客観的に見直し、将来を見据える上で有用な情報源となるだろう。

 

タイプ別グラフ 2021年までの世界のADASマーケット(単位 百万米ドル)
 

 

(出典元となる調査レポート「先進運転支援システム (ADAS):技術および世界市場」米国調査会社BCC Research発行)


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