第1回ウェビナー(清水氏×葛巻氏)動画を公開、視聴者への葛巻氏の回答も公開


 ReVision Auto&Mobilityは、葛巻清吾氏(内閣府SIP自動走行システム・プログラムディレクター、トヨタ自動車常務理事)と、清水和夫氏(自動車ジャーナリスト、内閣府SIP自動走行システム構成員)を講師に、自動運転の取り組みや課題について議論する第1回無料公開ウェビナーを9月21日午後5時から1時間実施した。ウェビナータイトルは「いま自動運転の課題にどう向き合うべきか -内閣府SIP自動走行システム大規模実証実験を控えて-」。ウェビナー中、視聴者から多くの質問やコメントが寄せられ、アクティブな情報交流の場となった。そのウェビナー動画と視聴者への葛巻氏の回答を公開した。

2017/10/5

友成 匡秀

第1回ウェビナー動画はこちらから(視聴には無料メンバー登録が必要)

※ 記事後半にウェビナー中、答えきれかなった主な質問やコメントに対する葛巻氏からの回答を掲載

 

 ウェビナーではまず清水氏が「世界トップランナーの自動車メーカー動向」と題して講演。独ダイムラー(メルセデス・ベンツ)の提唱するコンセプト「CASE(Connected、Autonomous、 Shared & Service、Electric Drive)」を紹介し、自動車の役割が変わりつつあることを、身近なIoTやボルボの自動運転ごみ収集車などの例を引きながら解説。また「モビリティの先には必ずコミュニティがある」として、人と人の出会いやコミュニティのあり方を考える重要性を説いた。

 自動運転によって運転がつまらなくなるという見方に対しては、自動運転のスイッチを入れないという選択肢もあり、こうした選択の自由によってモビリティが快適になると説明。ロボット掃除機の例を引きつつ、動くものに対する人間の自然な愛情についても触れた。さらに技術や社会受容性、法律、倫理問題など今後乗り越えるべき課題や、新しいモビリティと共に都市デザインを考える必要性を説き、「これから未来に向けて、どう私たちの暮らしが変わるか、社会全体のビジョンを考えていかなければならない」と語った。

 続いて葛巻氏が「SIP-adus大規模実証実験の狙いと概要」と題して講演。2014年から進めているSIP-adusの狙いとして、事故や渋滞を減らすことや産業競争力を高めること、2020年の東京五輪に向けて次世代バスシステムを実現しようとしていることを紹介した。

 また、3次元の高精度地図に様々な動的情報を載せていくといったダイナミックマップの概念についても説明。さらに10月から始まる大規模実証実験で主に取り組む5つの重要課題(ダイナミックマップ、情報セキュリティ、HMI、歩行者事故低減、次世代都市交通)について、それぞれの進め方について述べ、「大規模実証実験でオープンな議論をして、なるべく標準化という形に持っていきたい」と意気込みを語った。

 一方で海外の動向として移動サービス実証が増え、大きな流れとして、使用条件を絞って自動運転を早く実現していく、自動運転をオーナーカーの運転支援に使う、といった二つの方向性があると説明。SIP-adusでは過疎地の移動手段として自動運転バス実証などに取り組んでいることも紹介した。

 後半の議論では清水氏と葛巻氏が視聴者の質問やコメントを見ながら、電気自動車・自動運転機能をニーズやシーンに合わせて人が選択できるようにする重要性や、ダイナミックマップの精度や更新頻度をどこまで上げていくかといった課題、自動運転にかかるコストをどう低減していくべきかという今後の見通し、などについてディスカッションした。

 ウェビナー中、視聴者からは多くの質問やコメントが寄せられ、視聴者に対して選択式の質問、「大規模実証実験が掲げる5つの優先課題の中で特に注目しているものはどれか?」「協調領域以外で日本企業が特に注力すべき事柄は何だと思うか?」も投げかけ、結果をリアルタイムで公開するなど双方向のやり取りも実施した。

第1回ウェビナー動画はこちらから(視聴には無料メンバー登録が必要)

 

ウェビナー中に答えきれかなった主な質問やコメントに対する葛巻氏からの回答:

 

1.自動運転車両と自動運転以外の車が混じって走る際の課題について、どうお考えですか?

葛巻氏の回答: クルマというものは使用年数も長いものであり、混合交通という状況になることを前提に考えていく必要があると思います。この時、自動運転のクルマがこれまでのクルマの動きと異なる動きをすると、事故や混乱が起きてしまうため、これまでのルールやマナーを守る必要があります。また、自動運転のクルマと他のドライバーや歩行者などとのコミュニケーションをどう取っていくか?は大きな課題であり、HMI(Human Machine Interface)の研究開発の中でこのテーマの研究に取り組んでいます。

2.ダイナミックマップ、その他の協調領域について日本のガラパゴス化を防ぐための方策はありますか?

葛巻氏の回答: ガラパゴス化を防ぐために、活動当初からできる限りオープンにディスカッションし、国際標準化も積極的に進めてきました。具体的にはダイナミックマップやHMIについてはISOにて提案が受け入れられ標準化が進んでいます。また、デファクトという観点で欧州の関連組織であるOADF(Open Auto Drive Forum)などとの情報交換を行っています。さらに、今回の大規模実証実験も海外自動車メーカーや海外部品メーカーなどの参加を募り、オープンに議論していく予定です。 

3.自動運転に対する社会の理解をどう得るか、その方法や指針はありますか?

葛巻氏の回答: 社会の理解を得るためにできる限り情報発信を図っていく必要があると思っています。Webの充実や市民ダイアログなどイベントの開催、そして今回のウェビナーのような機会を通じて自動運転についての情報を積極的に発信していくつもりです。また、皆様に自動運転をより理解戴くためには、自動運転のメリットやデメリットをできる限り定量化して示す必要があると思っており、SIP-adusの取組みとして交通事故低減効果やCO2削減の算出をできるようなシミュレーションの開発にも取り組んでいます。

 

参考:内閣府SIPは10月3日、参加21機関を含めた大規模実証実験の詳細を公表。内閣府からのプレスリリース: http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/

 

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「プレミアムセグメントの自動運転 by 清水和夫」

 

 

第1回ウェビナー動画はこちらから(視聴には無料メンバー登録が必要)

ReVision Auto&Mobility第2回無料公開ウェビナーは11月開催予定(講師・日程は調整中)。

 

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