消費者データの収集と使用について公に一斉に議論されるようになったのは、一大ITブームが起こった2000年代初頭のことである。その後、当時のスタートアップ企業は記録的な速さで多国籍企業へと成長を遂げた。こうした成功の大部分は、ソーシャルメディアサイトやインテリジェントなウェブ検索などの新しいサービスを消費者に提供することによってもたらされた。それと引き換えに、ユーザーの習慣や興味に関するデータが無制限に収集されるようになり、こうしたデータを広告主や製品デザイナーなどが重宝するようになった。
2022/09/29
※このレポートはSBDより提供いただき掲載しています
自動車業界は、10年以上にわたって大手テック企業のデータ動向への追従を余儀なくされてきた。これは主に常時接続の欠如によるものであったが、自動車業界における技術革新のペースが緩慢だったことにも起因している。しかし今や車載コネクティビティはほぼ標準装備となりつつあり、自動車業界はよりアジャイルなソフトウェア駆動型構造へと軸を移し、自動車メーカー各社は現在、収集したデータの潜在的価値を引き出せるような新たな機会を急速に模索し始めている。
これにより、データを用いて顧客向けの新しいサービスや、機能が強化されたサービスが次々に登場している一方で、インフラの改善や安全性の向上など、公共的な目的にもデータが利用され始めている。
下記はOEMの主なコネクテッドカーデータのユースケースを挙げたものである。大枠としては、データを社内で活用して品質向上や開発、またはCRMに役立てる社内ユースケースと、第三者にデータを販売することで新たな収益源とする社外ユースケースに分類される。
車内データの潜在的な用途は数多く存在するが、自動車メーカーはデータの潜在的価値と、プライバシーに対する消費者の要求とのバランスを取る必要がある。この点については、グローバルで様々な法規制によって義務化されるケースが多くなってきている。
下記は欧州、米国、中国におけるプライバシー法についてまとめたものである。
自動車メーカー各社は、収集したデータの利用状況についての透明性を高めたり、独自のプライバシーコンプライアンスポータルを設けるなどして対応を強化している。データの使用方法を慎重に検討することで、プライバシーの権利を尊重しながら製品とサービスを改善でき、ひいては収益を向上させる可能性があり、今後も車載データ活用は更に進むと考えられる。
SBD Automotiveは、10月13日に開催される「ReVision 自動運転・ADASサミット2022」に登壇、「自動運転実現に向けたOEMの戦略:ソフトウェア、ハードウェア、センサーおよびV2X」と題した講演を行う。弊社の最新調査に基づき、SAEレベル3・4に必要な技術や、主要OEMのAD/ADAS戦略、自動運転に向けたチップベンダーの勢力図について概説するとともに、自動運転に関わるV2X技術に関して、世界・国内の状況を踏まえ、その役割と現在地点を伝える。
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