自動車業界におけるデータ活用の可能性


主要な自動車市場においてコネクティビティは普及し続けており、多くの自動車メーカーがリモート診断や車両データ戦略の導入に向けた取り組みを始めています。ただし、課題も山積しており、どのような道を進むべきかが自動車メーカーにとって重要な問題となっています。

Date:2018/08/15

Text:株式会社SBDジャパン

 

 データ活用に関して明確な戦略を打ち立てることで、アフターセールスサービスによる収益拡大、保証請求の回避、製品の品質改善、リピート購入の促進につながります。

 リモート診断および車両データの活用において重要な役割を果たすのが、埋め込み型コネクティビティです。埋め込み型コネクティビティを採用する車両の数は、欧州、米国、中国などの主要市場において今後3年間で倍増し、2020年までには52%に達するとSBDでは予想しています。こうした傾向は、コネクテッドカーにとってはプラスの要因となり、スマートフォンやOBDIIといったコネクティビティでは実現し得なかったユースケースをもたらすことになるでしょう。

 

 

 また、保険会社や大規模なフリート車両保有企業、データマーケットプレイスプロバイダーといった第三者企業にデータを提供することで金銭的な対価を得るには、自動車メーカーはコネクテッドカー部門を構築して適切なインフラに投資し、データプラットフォームプロバイダや分析企業とパートナーシップを結んでデータ主導の企業文化を定着させることが必要です。

 

 

 リモート車両データの活用に対し積極的なアプローチを採用しているGMやBMWといった「ファースト・ムーバー」はすでにその成果を上げています。

 コネクテッドカーに貢献し得る企業の種類や数は業界において増加しています。車両データ分野だけを見ても、例えばB2B車両データマーケットプレイスのOtonomoやCaruso Dataplace、SDKデベロッパーのHighMobilityやSmartcar、データプラットフォームプロバイダのIBMおよびMicrosoftといった新旧技術プレーヤーが様々なコンセプトを提唱しています。

 一部の自動車メーカーでは構造化されたマーケットプレイスを通じ、よりスケーラブルかつダイナミックな方法で第三者との統合やパートナーシップを実行しようとする動きもみられます。このようなマーケットプレイスとしては様々な形態があり、BMWのCarDataプラットフォームでは、ユーザーは自身のデータをサービスプロバイダーとしてエコシステムに参加している第三者と共有することを可能にしています。一方GMが提供する「GM Marketplace」は、ドライバーが車内で様々なブランドにアクセスし、オイル交換などのメンテナンスサービスの予約や、各種サービスを利用することができるというものです。

 ユーザーからの利便性の向上や市場競争を求める声が高まれば、自動車メーカーはこうしたデータ共有プラットフォームをアフターセールスサービス企業を含む競合他社にまで公開するかどうかの判断を迫られることになります。メーカーとしては傘下ディーラーを保護したいため、競合他社への公開の可能性は低いと考えられるものの、独立系企業によるロビー活動やレトロフィット型データ収集・仲介サービスの普及を考え合わせると、自動車メーカーは今後ますます厳しい競争下に置かれることになるでしょう。

 


◆このコンテンツは株式会社SBDジャパンよりご寄稿いただいたものです。

 

 

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