地図をベースに位置情報に基づいた様々なデータを日々、収集・分析しているグローバルデジタル地図大手のHERE。その日本法人HERE Japanの代表取締役を務める白石美成氏は「データの需要と供給のギャップを埋めるのがHEREのチャレンジ」という。7月5日のウェビナーを前に話を聞いた。
Date:2018/06/30
Text:友成匡秀
Photo:フォトグラファー 早川マナ
世界200カ国以上にデジタル地図やコンテンツを提供しているHEREでは、毎秒70万にも上る3次元点群データを収集、毎日100万の変化点を地図に追加している。
これからの自動運転に地図は必須になる。白石氏によると、HEREでは自動運転に関しては主に3種類の使い方を想定して地図づくりしているという。まず一つ目は先進運転支援システム(ADAS)への活用を目的としたもの、次は高速道路の条件付自動運転(レベル3)に使えるもの、最後は一般道を含む完全自動運転(レベル4、5)を想定したものだ。
「自動運転の際には地図に差分を常に更新しなければならない。何かのトリガーに対して、常にクラウドから更新していくというイメージ。HEREでは2km四方のタイル単位で地図更新が可能な形にできている」
位置情報に関連してデータを意味づけ
また、HEREは、「Reality Index(リアリティ・インディックス)」という現実世界をリアルタイムに可視化したデータとオープンなプラットフォームも提供している。車や人、モノの動き、ドローンなども含めた膨大なデータを位置情報に関連して意味づけをしようとする取り組みだ。
このプラットフォームでは位置情報に基づき、データを集約・フィルタリング。誤差を減らしてインテリジェンス化し、使える状態にして開発者向けに開発ツールを提供している。白石氏はプラットフォームの考え方について、こう話す。
「データプラットフォームは中立かつ使う側にメリットのあるものでなければならない。中立とはボランティアではないが、データの胴元というわけでもない。データを提供してくれる方にはそれに応じてメリットを受けてもらい、サービスをする方は利益を上げると還元してもらう。大事なのはデータをオープンに使ってもらえるようにすること」
ユーザー調査からのヒント
これら移動に関するデータを活用する上で、ドライバーなど一般ユーザーからどれほど受け入れてもらえるかを評価するユーザーアクセプタンス・テストにも白石氏は注目している。HEREでは、世界8カ国8000人の一般消費者への聞き取りを分析した調査結果があり、5月のReVision Mobilityセミナー&交流会では、そのうち代表的な項目を紹介した。
調査によると、「プライバシーに関して懸念がある」という一般ユーザーは89%と非常に高い割合に上り、「位置情報を共有することにストレスを感じる」が76%、「自分の位置情報をアプリなどのサービスでコントロールできるか」という点には80%のユーザーが難しいと感じているという結果だった。一般的に、ユーザーは自らのデータを使われることに非常にセンシティブといえる。
その一方で、「プロファイリングを行い自分のデータは自分が車に乗っている時だけ使われる」といった想定には65%の人たちがポジティブな反応を示し、「自分のプライバシーポリシーを監視・マネジメントしてくれるAIのようなアシスタント機能の存在」には51%の人が好意的に応じた。データ活用へのカギは、ユーザーが安心できるマネジメントの仕組みを提供できるかどうかにかかっている。
白石氏は「これらのユーザーの意識調査に、将来のデータ活用へのヒントを見つけていけるのではないか」という。
車に乗っている時のデータの扱い
将来的にカーシェアリングなど車を共有する仕組みが浸透していった場合、どのようなビジネスモデルができてくるのか、また、カーシェアでも乗ってもらえるように自動車メーカーが自社の車をどうブランディングしていけるのか、などにも白石氏は関心を持っているという。
シェアカーを使っている場合でも、ドライバー個人それぞれが自分のデータがどう使われるかを選択できることが望ましいという意見だ。「車に乗っている時の自分のデータは、あくまでも自分のものだ、という考え方を浸透させていくべきではないだろうか」と提起する。
また、これからのデータを安全や自動運転、モビリティサービスにどう活用できるのか、常に考えているという。
「個人はどのようなインセンティブがあれば、データを共有してもよいと思うのか。例えば、自分のデータを共有することで社会全体の安全に役立つ、という大きな意義があると共有してもらえるのだろうか。ウェビナーでも視聴者の方と議論ができればと思う」
◆白石氏が出演予定の「ReVision Premium Club 第6回ウェビナー」は7月5日開催予定です。