「人間中心の自動運転を進める」(マツダ):TU-Automotive Japan


 コネクテッドカーや自動運転、モビリティ分野のキーパーソンを集めて毎年開かれるTU-Automotive Japanが10月17、18の両日、ウェスティンホテル東京で開催された。今年は「コネクテッドカー+自動運転の進化から生まれる次世代サービスを探る」とのテーマに沿い、マツダや日産自動車、ボッシュ、ヤマト運輸、ディー・エヌ・エー(DeNA)、東京海上、総務省、群馬大学など、さまざまな業種からエキスパートが講演した。

2017/10/26

友成 匡秀

 

マツダの栃岡孝宏氏

 マツダの統合制御システム開発本部首席研究員、栃岡孝宏氏は「マツダが目指す自動車の未来像」として講演し、新たな技術をどう活用するか、という視点からマツダの自動運転への考え方を解説した。クルマの価値を「個人の自由な移動による生活の充実」を実現するものと捉え、現時点で存在する自動化技術等の活用として「機械中心に考える」「ヒト中心に考える」といった大きく二つのルートがあるという認識を披露。どちらが正しいというわけではないとした上で、「マツダは2014年以来、人が運転することを前提に自動運転を提案してきた」と述べた。

 運転操作が人の心と体を活性化させるといった効果を研究データを使って示しつつ「車を運転する行為は体を使い、スポーツとして体を維持していくのと同じ」と述べ、理想的な人と車の関係イメージとして「人が能力を発揮し、イキイキしている。その裏ではクルマが人と車の動きを把握している」といったビジョンを提示。自動化技術の活用例として、ドライバーが運転をしているときにも常にシステムがバックグラウンドで仮想運転をしていて、ドライバーの異常を検知したときに車が人をオーバーライドして安全な場所に誘導することなどを挙げ、あくまでヒト主体の自動運転コンセプトを強調した。

無人運転に5G技術が貢献

日産自動車の村松寿郎氏

 日産自動車のコネクティドカー&サービス開発部テレマティクス開発グループ、AD&ADAS先行技術開発部 HDマップ開発グループ、コネクティドカー&自動運転事業本部で主管を務める村松寿郎氏は「自動運転時代を見据えたコネクテッドカー」と題して講演。初代リーフの発売以来、バッテリーをモニタリングしてきた日産のコネクティビティ活用について説明し、今後のサイバーセキュリティ対策の重要性を強調した。

 また追浜工場で実施している完全自動運転による車両搬送のビデオを披露し、二つの車両が交差点や右折時に出くわしたときに、どちらも止まってしまう場合があり、その際に監視しているオペレーターが車がどう動くべきかルート(パス)を引くことなども解説。今後の無人運転の実現へ向けて「このようなとき、オペレーターが車の状況が分からないとルートを引けない。車の周囲の状況を知るためにはかなりのデータが必要」と述べ、これからは5G技術などがこうした部分に貢献できるとの見方を示した。

高速で安全なビークルコンピューターが必要

 ボッシュの自動車システム統合部部長、越智純一氏は「次世代車載システムのあり方」について講演し、今後のE/Eアーキテクチャのトレンドとして、機能ドメインが統合されて中央集権化が進むといった方向性を図を使って提示。「ビークルコンピューターも一つになっていく」として、自動化・ネットワーク化・電動化による新しいサービスの実現には「高速で安全なビークルコンピューターが必要」と述べた。また、ボッシュが取り組むコネクテッドサービスの技術基盤として「ボッシュオートモーティブクラウドスイート」も紹介した。

 DeNA執行役員でオートモーティブ事業部長の中島宏氏は、個人間カーシェアの「Anyca(エニカ)」や無人運転バス「Robot Shuttle(ロボットシャトル)」、ヤマト運輸と共同で取り組む次世代運輸サービス「ロボネコヤマト」、神奈川県タクシー協会と連携したタクシー配車アプリ「タクベル」など、現在進行形の様々なモビリティサービスについて状況を報告。変革するモビリティ業界で、インターネットカンパニーの強みを生かしてモビリティサービス・プラットフォームを構築するというビジョンについて語った。

「ロボネコヤマト」で雇用拡大の可能性

 またDeNAと共同で「ロボネコヤマト」の実証実験を進めているヤマト運輸のネットワーク事業開発部課長、畠山和生氏は、オンデマンド宅配便サービスの「ロボネコデリバリー」のほか、オンデマンド買物代行サービスの「ロボネコストア」も実証実験していることを紹介。また、自動化やコネクティビティ技術の進展により、従来ドライバーに求められてきた運転技術や配送ルート組み、体力などのスキル条件が緩和されるため、「雇用拡大につながる可能性がある」と述べた。

 このほか、総務省総合通信基盤局電波部移動通信課新世代移動通信システム推進室長の中里学氏や三菱ふそうトラック・バス CIOのルッツ・ベック氏、東京海上日動火災保険営業企画部グローバルマーケティング室次世代自動車タスクフォース参与の小坂昇氏、群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター副センター長の小木津武樹氏、東京大学情報理工学系研究科准教授で株式会社ティアフォー取締役兼CTOの加藤真平氏ら、産官学のキーパーソンから講演があった。

「日本のコネクティビティは遅れている」

 海外からのスピーカーとしては、フィンランドのモビリティサービス・ベンチャー、マース・グローバルCEOのサンポ・ヒータネン氏、米調査会社ストラテジー・アナリティクスでオートモーティブ・コネクテッドモビリティ部門ディレクターを務めるロジャー・ランクトット氏らが講演。1日目午前中の座長を務めたランクトット氏からは「日本の自動車業界はコネクティビティに関し、世界に比べて遅れている」といった見方も示された。また、次世代インフラの在り方や技術がもたらす社会的な変化などのテーマで業種を超えた多数のパネル・ディスカッションも行われた。

 

パネルディスカッションの様子

 

“「人間中心の自動運転を進める」(マツダ):TU-Automotive Japan” への1件のコメント

  1. 1505177658 より:

    「日本の自動車業界はコネクティビティに関し、世界に比べて遅れている」というのは事実だと思うが、だんだんキャッチアップできてきているという印象。5Gの活用は東京でオリンピックが開催されることもあって業界として世界にアピールできるチャンスと捉えて頑張っているのは分る。技術的にはある程度までは持っていけるだろうが、如何にアピールできるか、アプリケーションのアイデア、出口戦略をどのように描けるかにかかっている。

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