タクシー業界はMaaSでどう変わる?


自動車メーカーや鉄道会社、バス業者などがMaaSを意識した取り組みを行う中で、タクシー業界の動向にも注目度は高まっている。MaaSと親和性が高いタクシー業界の取り組みを紹介する。

Date:2018/07/24

※この記事はLIGAREより提供いただき掲載しています。

 

混沌としたモビリティ業界

 6月に開催された未来投資会議の戦略にも盛り込まれ、注目が集まっているのがMaaS(Mobility-as-a-Service)だ。トヨタのモビリティーサービス専用EV「e-Pallet(イーパレット)」など、自動車メーカーもさることながら、JR東日本における「モビリティ変革コンソーシアム」設立のように、鉄道会社もMaaSを意識した取組みを行っている。バス事業者もICTを活用したバスロケーションシステムなどの運行管理や、路線バスやシャトルバスでの自動運転の実証実験など、MaaSも見込んだ取り組みが活発だ。

 また、シェアサイクルのサービスも各地で急激に拡大している。各社が貸し出しを行っている自転車はGPSで管理されており、ロックもスマートフォンで解錠できるシステムが主流だ。交通機関と連携すれば、スマートフォン一つでの快適な移動につながるだろう。5月には、個人間での駐車場シェアリングサービスを手がけるakippaがMaaSプラットフォームの構築に向け住友商事など7社から8.1億円の資金調達を実施すると発表した。MaaSを意識しているのは交通事業者だけではないというけん制にも見える。混沌としたモビリティ業界で、この余波はタクシー業界にも確実に押し寄せている。

 

タクシー×AIで需要予測にオンデマンド配車も

「相乗りタクシー」のアプリ画面イメージ

 JapanTaxiは2018年1月から2カ月間、国土交通省と相乗りタクシー実証実験を行った。「相乗りタクシー」のアプリを使うと、乗車地と降車地を指定するだけで、同方向への相乗りを申し込んでいるユーザーを検索してくれる。同乗者検索・タクシー配車・支払いが1つのアプリの中で完結する。日本交通グループ300台の車両を東京都23区、武蔵野市、三鷹市のエリアに配車して実証実験が行われた。この実証実験では「駅すぱあと」の株式会社ヴァル研究所、株式会社NTTドコモ、株式会社ナビタイムジャパンとの4社がサービス連携した。

 3月にはトヨタ、KDDI、アクセンチュアとタクシー運行実績とスマートフォンの位置情報から生成する人口動態予測やイベントなどの情報を掛け合わせて予測したタクシー需要を配信する「配車支援システム」を開発したと発表。AIを活用して東京都内500mメッシュ毎のタクシー乗車数を30分単位で予測する。気象、公共交通機関の運行状況、大規模施設でのイベントなどのデータをAIに取り込む。日本交通のタクシーにタブレットを導入し、乗車数の予測や周辺の空車タクシー台数を同時に表示することで、ドライバーが需要と供給のバランスを把握できるという。

 つばめタクシーグループは2018年の2月から3月にかけて、公立大学法人公立はこだて未来大学、NTTドコモ、未来シェアと共同で、SAVS(Smart Access Vehicle Service)を活用した「相乗りタクシー」の実証実験を行った。未来シェアのSAVSは、ルートを固定せず需要に応じて乗合い車両を走行させるシステム。スマートデバイスとクラウドプラットフォームをベースとしたアプリケーションが通信し、AIがリアルタイムに車両の最適な走行ルートを決定する。この技術により、需要に即した乗合い車両の配車決定を完全自動で行うことができる。このように、タクシー事業者での配車アプリを使ったオンデマンド配車の実証実験や需要予測の取り組みも増えている。

SAVSを活用した未来シェアの取り組み

 

 神奈川県タクシー協会では2018年4月からDeNAとAIを活用した次世代タクシー配車アプリ「タクベル」のサービスを開始した。乗務員専用端末とセットで、タクシーの配車をスムーズに行えるサービスで、今夏には神奈川県全域でのサービスを展開する。乗客は、アプリで予想到着時間を事前に確認し、指定の場所へタクシーの配車依頼を行うことができる。周辺を走行中のタクシーがリアルタイムに可視化されて表示されるため、空車走行中のタクシーを簡単に確認することができる。神奈川県内182事業者のうち82事業者の導入が決定している。近年、横行している白タクライドシェア対策として、タクシーサービスの高度化を進めるために導入検討された同サービスだが、アプリでの配車はMaaSの世界にもつながっていく。

 5月には、ソニーがグリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブ、東都自動車、日の丸自動車のタクシー会社7社と、「みんなのタクシー株式会社」を設立。ソニーは新会社に対してタクシーの需要予測などに向けたAI技術などを提供し、タクシー会社7社は、会社の枠を越えて配車サービスなどを活用するという。神奈川県タクシー協会の事例にも見られるように、今後は会社の枠にとらわれずに、配車サービスなどでタクシー事業者同士が協力し合う事例も増えてくるだろう。

 

「UBERアプリ」、マイカー有料運送など新しい取り組み続々と

「UBERアプリ」の画面イメージ

 関西では、今夏より、注目の取組みが始まる。淡路島で米国の配車大手ウーバー・テクノロジーズの配車アプリを活用したタクシー配車の実証実験が開始される。実証実験は兵庫県淡路県民局が主体となり、淡路島のタクシー会社、全12社に参画を促す。タクシー事業者には「UBERアプリ」を搭載したタブレットが導入され、利用者はスマートフォンの「UBERアプリ」を使って配車可能なタクシーを選択して利用する。実験は、2019年3月31日まで行われる。

 また、兵庫県の養父市では5月26日から国家戦略特区による道路運送法の特例を活用した新たな自家用有償旅客運送事業「やぶくる」が開始された。地域住民がドライバーとなり、自家用車で有料運送を行う。全但タクシー、あいあいタクシー、丸八観光タクシーのタクシー会社の他、観光協会や地域住民、行政らが立ち上げたNPO法人マイカー運送ネットワークが運営する。

 スマートフォン上のアプリですべての移動サービスを提供するというMaaSの一つの定義の中では、移動したいというユーザーのニーズにオンデマンドで応えることは必須となる。アプリを使ったオンデマンド配車や乗り合いサービス、他の交通事業者との連携など、新しいサービスがタクシー業界をよりMaaSの世界に近づける。

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