自律型移動ロボット、Amazon効果でオーダーピッキング分野での利用が急増


新型コロナウイルス流行の影響を受けて、物流業界における移動ロボット技術の導入は必須と予測されている。英国に本社を置くInteract Analysis社は、世界の移動ロボット市場について調査を行い、その内容をレポートとしてまとめて発行した。当レポートでは、COVID-19が移動ロボット市場へ及ぼす短期的・長期的な影響、eコマース率の上昇による失業率が業界に及ぼす影響、自動化される可能性が高いフォークリフトのタイプ、移動ロボットソフトウェアに対する今後のアプローチ、およびロボットの相互運用性などについて分析し、提言を行っている。ここでは特に注目すべき自律型移動ロボット技術を中心とした概要と2024年までの市場規模予測の一部を抜粋して紹介する。

Date:2020/11/05

※このレポートはグロ-バルインフォメ-ションより提供いただき掲載しています。

 

 

自律型移動ロボット(AMR)は、ロボット市場でいま最も注目を集める技術と言っても過言ではない。AMRは、ヒトを介さず自律的なルート変更が可能だ。外部のインフラを必要とせず、オンボードナビゲーションを使ったルート変更ができる点で、移動ロボット市場の主要技術である自律型誘導車(AGV)とは一線を画する。AMRの売上は、特にeコマースの受注処理分野で急成長している。オーダーピッキングをサポートする一連のプロセスで使用されるAMRは、2019年に前年の2倍以上となる約2万台が出荷された。Interact Analysis社の専門家がベンダーや顧客からデータを収集・分析した結果、2024年にはAMRの出荷台数は53万台を超え、稼働台数は110万台を超えると予測される。これは、2019年末時点に倉庫で稼働中であった3万6000台から大きく飛躍する数値である。

 

受注処理向け自律型移動ロボット技術の概要

労働力不足、季節ごとの需要の変動、より安価で迅速な配送に対する顧客の期待、そしてコロナウイルス危機下でのeコマースの急速な普及などにより、自律型ロボットは受注処理時のピッキングや仕分け作業の分野で大いに活躍が見込まれている。

 

表1:受注処理向け自律型移動ロボットインストールベース数の推移

 

Goods-to-Person(G2P)ロボットが圧倒的な市場シェアを獲得する一方、すべてのロボットタイプで需要の拡大が見込まれる。現在、G2Pロボットの多くはQRコードを使ってナビゲーションを行っており、真のAMRとは言い難い。しかし、インフラや固定されたグリッド上のルートが不要なLiDAR技術の利用は増加傾向にある。同タイプのG2Pロボットの市場は、技術の向上とともに大幅な成長が予測される。これらのロボットは、大手小売業者や大規模サードパーティロジスティクスプロバイダー(3PL)に好まれ、一度に多くの台数を導入する傾向がある一方、投資の回収まで一定の期間を要する。現在、G2Pロボットの配備数は1000に満たないが、2024年までには約7000に拡大し、G2Pインストールベースに約80万台のロボットが配備されるだろう。G2Pロボットの収益は、最終産業別に総合小売業セクターが44%、3PLが19%を占める。地域別では、上位の投資家である中国と米国が、それぞれ売上全体の35%と19%を占めている。

Person-to-Goods(P2G)ロボットは、迅速かつスムーズに導入できる低コストのソリューションであるため、主に小規模の小売業者や3PLに導入されている。顧客は、業務の中断を最小限に抑えながら、段階的にロボットを追加することがでる。P2GはG2Pソリューションに比べて資本支出を大幅に抑えられるため、小規模企業向きであると言える。2019年に約100だったP2Gロボットの配備数は、2024年に2400まで急増し、約13万台のAMRロボットがP2Gインストールベースに配備されると予想される。2019年から2024年にかけてP2Gの収益は3PLセクターが48%、総合小売業が36%を占める。国別では、米国が38%、中国が19%で収益シェアの上位を占めた。

ロボットアームを搭載した移動式ロボットの配備は限られている。物流分野以外では、高価で壊れやすいウエハを扱う半導体工場で使用されている。ロボットでウエハを扱うと、破損を回避でき、費用効果の高いソリューションとなる。物流分野では、似通った大きさや形の物のピッキングに使用できる。

例えば、IAM Roboticsは、物流分野向け技術を開発している先駆者である。2019年にはロボットアームを搭載した移動ロボットの出荷数が数百台であったのに対し、技術の急速な進化により、2024年までに物流企業を中心に5000台以上の販売が見込まれている。

仕分けロボットは、受注処理分野で他のAMRよりも数年遅れをとっており、多くの顧客は試用段階にあると考えられる。興味深いことに、これらのロボットは、熟練労働者の職を奪うというよりは、既存技術に代わって導入される傾向がある。仕分けロボットは比較的新しい技術ではあるが、他のAMRと同様に、LIBIAO/Tompkins Robotics、GreyOrange、Geek+などの企業が、汎用性、能力、精度を高めるため、技術を向上させており、その将来は有望とされる。Interact Analysis社のアナリストによると、2024年までに約30万台の仕分けAMRが稼働し、その収益は5億5000万米ドルになる見込みだ。2018年の収益が1000万米ドル未満だったことを考えるとかなりの急成長といえる。

 

Amazon効果:意識的か、それとも無意識なのか?

オーダーピッキングにおけるAMRの利用が急激に増加している背景には何があるのか?COVID-19パンデミックによるオンラインショッピングの大幅な増加が拍車をかけたのは間違いないが、もう一つの要因は、世界最大のオンライン小売業者Amazonの存在にある。Amazonは、以前から物流センターにロボット技術を導入している。Amazonは2016年に1万5000台のG2Pロボットをフルフィルメントセンターに追加し、その年の終わりには20の施設で計4万5000台を保有していたと報じられている。2017年にはさらに5万5000台のロボットを追加したが、その後も増加し続け、2020年8月には倉庫フロアに推定25万台のG2P AMRが設置された。Amazonは以前、当時の大手AMRメーカーKiva SystemsからG2Pロボットを購入していたが、2012年に同社を7億7500万米ドルで買収した。その後まもなく、Kivaロボットの外部販売を停止し、自社のニーズに合わせた生産に限定させることで、競合他社へのAMR供給に空白を作った。この一連の流れは、巧妙な商業的戦略として知られる。

Amazonの破壊的な行動は意図しない結果をもたらした。Kiva Systemsが作り出した空白を埋めようと何十社もの新規AMRメーカーが殺到したのだ。その結果、小売業者は、競合のせめぎあう市場において、最新の自動化技術の必要性を認識し、飛躍的な技術の進歩につながった。

 

自律型移動ロボットの飛躍的成長

AMR業界は、過去数年間で数十億ドル規模のセクターへ急成長を遂げた。初期試用をすでに実施済みの顧客による幅広い展開により、2024年まで速いペースで成長を続けると予測される。さらに、興味深い点として、当技術がすでに他の場所で実証されているとの理由から、新規顧客は初期の試用段階を踏まず、部分的または完全な製品導入へ移行する傾向にある。

 

表2:物流会社による自律型移動ロボットの展開例:

 

引用元レポート:
移動ロボット市場:2020年
発行 Interact Analysis  出版日 2020年09月21日


オートメーション/ロボットの市場調査レポート
調査レポート販売代理店:株式会社グローバルインフォメーション

 

 

 

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