東京モーターショー2017を若い世代はどう見たか


 車に対する若者ニーズが変化する中で、東京モーターショー2017を若い世代はどう見たのか。東京大学を中心とした集まりで、モビリティについて日常的にディスカッションしている学生や研究者たちに、今回のモーターショーのどこを面白いと感じ、これからに何を期待するのか聞いた。

2017/11/6

嶂南(やまなみ) 達貴さん(24)東京大学 大学院生

 展示されている車で新しいと感じたのがダイハツの「DNプロカーゴ」や、キッチンカーとして使える高山自動車の「マイクロフリーダム」。人だけではなく空間を見据えたクルマづくりをしていて、身近なところで変化が起こりそうだな、と感じさせられた。ヤマハのライディングロボットMOTOBOT対人類最強レーサーの対決、といった構図は、ヒト対AIといったストーリーを象徴的に表していて面白かった。

 一方で、未来のモビリティを示す、ダイムラー「スマート」やトヨタ「コンセプト-愛i」、ホンダのEVコンセプトは、白く、窓が大きく、どれも似たようなデザインに思えた。SF作家が描くものと変わらなさそうだ、と感じる。ダイハツのほうが発想が斬新に感じた。

 展示内容にも、もっと「臨場感」や「尖り」がほしい。トヨタ自動車の人工知能Yuiも、音声で操作できるナビがついただけといった印象で、人と車の距離が縮まるようには感じられなかった。前に東京ゲームショウではリアルな女子高生CGが話題になった。そのクルマ版がどのようなものかは分からないけれど、動画や展示で、よりリアリティをもって表現してほしいと感じる。

 また、展示してあるのはクルマだが、今後は周辺環境も大事になると思う。周辺情報をARで窓ガラスに表示するのか、次世代の信号や横断歩道があるのか、街を管理している自治体と車会社が連携すると何ができるのか。主催者側が、会社・業界の垣根を越えて、散らばっているいろいろな要素をつなげ、コラボレーションを見せていけば、伝わるものは変わってくるはず。

 昔はオタクだけのものだったが、今は多くの人が楽しんでいるコンテンツは多い。世界が多様化し、変化する中で、共通話題をつくって交流し、クルマの新しい楽しみ方を見つけていくコミュニティがあればいい。ダイムラーのme-Conventionなどはそうした取り組みの一形態だと思う。モーターショーが、クルマをもっとオープンにするきっかけになればいいと思う。

 

花岡 拓海さん(22)東京大学 大学生

 僕自身は、非常に車が好き。今回のモーターショーは未来の可能性を再確認させてくれつつ、感性的にわくわくさせてくれた。クルマ好きでない人も楽しめる内容だったと思う。最近は自動運転がニュースになるが、複数のメーカーが運転する喜びについて語っていたのが印象的だった。自動運転に興味はあるが、自分でも運転したいので、そこは納得。

 自動運転に関していえば、いつ頃、本当に実現するのか気になるところ。その中で、アウディが長期的にレベル4を目指しつつも短期的な目標も語っていて、ステップアップしていく感覚がよく伝わってきた。また、ダイハツは自動運転で身近な生活がどう変わるか、分かりやすく見せてくれていたと思う。

 部品メーカーではテイ・エステックの「やすらぎ空間シート」も印象に残った。これから自動化が進むにつれ、クルマ内部の居住性で差をつけていくことになるはず。その点でいえば、全体として部品メーカーにあまりスポットが当たっていないのは少し残念に感じた。

 期待していて残念だったのはトヨタ。コンセプトカーや展示でも、僕たちが(大学の)勉強会で話し合っていたものの想像を超えていなかった。また、モーターショー全体として、来場者と技術者の対話がなかったのは、欠けていた点。来場者が「おぉー」と言って展示されている車の写真を撮るだけで、せっかくなら彼らの要望を吸い上げたらいいのに、と思った。

 きっと僕たち20代がこれから一番需要を生むところ。だけど展示の仕方や見せ方は10年前に来た時と変わっていない。その頃はスポーツカー・ブームだったが、そうしたスポーツカーを見せる感覚で自動運転車を展示している。30代・40代向け。モーターショー、イコール、車好きがスーパーカーを見に行く、というイメージ。私は工学部なのに周りにモーターショーに行く人がいなかった。

 もっと来場者との対話が必要なのでは。若者はエネルギッシュなので、わくわくさせてくれて、例えば自動運転で何がどう変わるのか、ちゃんと分かるのであれば来るはず。自分たちの暮らしがどう変わるのか、その先まで見せてほしい。

 

須田 英太郎さん(27)東京大学 大学院生

 自ら自動運転のウェブメディア「自動運転の論点(http://jidounten.jp/)」を運営していて、今後のモビリティがどうなるかにはとても興味がある。モーターショーでは、トヨタ車体のプレゼンテーションや展示が、具体的なユースケースを想定していて印象に残った。例えば、車椅子競技をしているアスリートが、競技や練習が終わった後、自分の車椅子を乗せて自ら車を運転して帰っていく。そういった多様な移動のニーズを踏まえて、未来のクルマを発想していた。

 今回のモーターショーで、どの会社が何を売りにしているのかを知れたのはよかった。ただ、どの会社も「今のクルマが好きでしょう、それがもっとよくなりますよ」というスタンスでコンセプトカーを打ち出しているのが気になった。これでは、クルマに漫然と乗っている人には刺さらない。ダイムラーがサウス・バイ・サウスウエストと連携して行ったme-Conventionの例のように、クルマ好きでなくても「なにか面白そうなことをしている」と興味を持ち、新しいモビリティのあり方を一緒に考えられるようなイベント設計ができたのではないか。

 僕自身は、クルマに乗ることも運転も好き。最近はディー・エヌ・エー(DeNA)の個人間カーシェア、エニカ(Anyca)をよく使っている。このスキームなら自分では買えないようなスポーツカーにも乗れる。正直、モノを所有したくはないし、家やクルマを買いたいとは思わない。今後の社会ではシェアリングが増えていくと思う。

 モーターショーにもシェアリングの要素を入れていくとよいかもしれない。今は「面白い車ができました、あるいは造ります。乗りたければ買ってください」というスタンスで、買うつもりのない自分にはどこか他人ごとのように思える。もし「こういう機会やサービスを利用すれば、あなたもこのクルマに乗れます」という提示の仕方であれば、より興味がわく。展示されている車へのアクセス方法があればいい。

 モビリティには、「自分が乗って移動するクルマ」だけではなく、宅配便のような「モノを運ぶクルマ」もある。モーターショーでは、移動することや移動させることについてもっと大きく捉えて、モビリティで日々の生活がもっと良くなる仕組みやサービスを考える場になればと思う。

 

田中 和哉さん(31) 東京大学 大学職員

 モーターショーには何も期待せずに来たが、想像以上に人が多かった。外国人が多かったのにも驚いた。消費者にクルマを買わせたいのか、それとも他の目的があるのか、モーターショーの意義がはっきりと分からなかったが、産業的に、これが日本の重要産業なんだ、ということは身近に感じることができた。

 こうした大きなイベントに、海外のウーバーやテスラがいなかったのは残念に感じた。また、需要という観点から見ると、これからの日本企業は海外に消費者を求めるべきで、日本としては造る国としてやっていくべきと思う。そうした意味では、ビジネスモデルの話がもっとあってもよかったし、そういう部分を広くディスカッションできるような機会があればよかったのではないか。例えば、インドのライドシェア企業のディスカッションがあるなら、興味がわく。

 展示されているコンセプトカーの存在にも疑問を持った。会社によっては、コンセプトカーと実際に出している車が乖離していることもある。展示を見ながら、出せないプロトタイプで世界観をつくるのではなく、少量生産でもいいので走らせてほしいと思った。

 私としてはクルマは所有じゃなくてシェアで使うもの、という捉え方。だから、展示されているものも、その車が家に近いカーシェア・パーキングであるかどうかということのほうが重要。もしかしたら将来、子供ができ、家族を安全に快適に運ぶためのものとしてクルマを見るかもしれない。ただ、その場合は安全性とコストパフォーマンスが重要になると思う。デザインかっこいいな、と思ったとしても、価格帯が合わないと買う機会はないと思う。

 モーターショーは初めてだったが、ほとんど見るだけで体験できないのに、これほど人で込み合っているのは驚いたし、ちょっと辛かった。むしろメディアを通して見るほうが、全体をよく理解できるような気がした。一方で、メディアで内容を見た上で、足を運んで展示を見るのは、観光ガイドブックを見ながら一方的に見どころを確認していくよう。むしろブースでは展示品を見せるよりも、体験をメーンにするとよいのではないかと思った。

 

中出 未来之さん(21) 東京芸術大学 大学生

 デザイン科の学生なので、東京モーターショーは、プロダクトデザインを学ぶために訪れている。今最も新しいデザインを勉強する、という意味では今回も全部、興味の対象だった。

 今回、一番好きだったのは、ホンダの「スポーツEVコンセプト」。以前のトヨタの2000GTのような空気感があって、レトロ感を取り入れつつ、正面のディスプレーを使ってうまく未来のイメージを表現していると思った。

 トヨタのコンセプト愛iのデザインもキュートだし、未来感があった。ただ、Yuiも使ってみたが、いつも使っているSiri(iPhone)が使いやすいと感じた。特に作品制作中は両手がふさがっていたり汚れていることが多いので、よくSiriを使うが、しゃべりかけやすいし、反応のタイミングが抜群。Yuiは、ルートなどいろいろと提案してくれるけれど、答えるべきタイミングが決まっているし、ここにもSiriが入っていればいいのに、と思ってしまった。

 モーターショー自体は、非常に満足できた。ただ、大学生の立場としては、クルマを持っても置き場所に困る。でも、あったほうが便利だし、美術の材料も運べるし、とも思うこともある。もっと、自転車みたいに気軽に所有できたらいい。

 東京モーターショーは、ファッションショーみたいなものと思っている。ファッションショーで見る服は、奇抜でかっこいいけど、これホントに街で着るのかな、という感じ。私の地元は三重で、高校を卒業すると、友達から普通に「クルマ買わないといけないけど、どうしよう」というような会話が出てくる。何で決めるか、基準はだいたい、値段とデザイン、容量、つまり載せられる人や荷物の量。そんな友人たちが買うものと、モーターショーで展示されているクルマは違うと感じる。

 それでも、友人たちも買うときはいろいろと車について調べるし、すると車にどんどん興味が出てくる。そうなると、モーターショーももっと別の角度から楽しめるようになるのかな、と思った。

 

(聞き手 友成 匡秀)

 

“東京モーターショー2017を若い世代はどう見たか” への1件のコメント

  1. 1505177658 より:

    我が家にも、就職に有利だからと免許を取得した子供が3人いるが、自宅にいる長子は車は買う気もない。北海道の田舎で暮らす末子は2年は徒歩と公共交通機関だけで過ごしていたが、移動に不可欠ということで中古車を購入。今年社会人になり、三重に引っ越したもう一人も今は公共交通機関を使っているが、来年には移動の足が欲しいと言っている。若者はレジャー主体で車を持つことには優先順位が高くないが、必要に迫られれば購入することを考えるのだろう。

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