次世代のクルマに必要なデータプラットフォームとビジネスモデルを考える ‐7月5日開催ウェビナーレポート-


HERE Japan株式会社 代表取締役の白石美成氏と、日本オラクル株式会社クラウドソリューション営業統括Digital Transformation推進室 担当シニアディレクターの内田直之氏を講師に招き、第6回ReVision Premium Clubウェビナー「次世代のクルマに必要なデータプラットフォームとビジネスモデルを考える」が7月5日午後5時より開催された。

Date:2018/07/10
Text :住商アビーム自動車総合研究所 プリンシパル 川浦 秀之

 

Reality Indexの真価

 ウェビナーではまず、白石氏が講演を行った。

 白石氏は「位置情報は膨大な量が蓄積される一方で、分散・点在しているさまざまなデータをつなげる触媒になる」とし、同社のサービス「Reality Index(リアリティ・インデックス)」について、自動車だけでなく、さまざまなモビリティサービスにとって大規模なデータソースになると述べた。

 Reality Indexをさらに有効活用するために、同社はHERE Open Location Platform(オープンロケーション・プラットフォーム)を通じてサービスを提供したいという。このプラットフォームで提供されるサービスの一例として「Hazard Warning」を挙げ、ビデオを用いて紹介。また、オープンプラットフォームの活用によるデータ共有によって、自動車メーカーが他業種とつながることにより、どのような「新たな価値」を顧客に提供できるのかというイメージを示した。

 講演の後半部分では本年3月に発表したデータプライバシーと位置情報に関する一般消費者の受容性をまとめたレポート『Private and Location Data global consumer study』を解説した。

 このレポートは米国や英国、日本など8カ国の8千人に対するアンケート調査を分析したもの。たとえば、「デジタルプライバシーとデータ収集規約に関するユーザーの判断」については、89%が個人情報の共有に懸念を持ち、87%は個人情報の規約を好ましくないものと位置づけているという。このほかにも「写真アプリの位置情報共有に対する懸念」「位置情報の価値に対する理解」などについての分析結果も語られた。

 

ITエンジニアだから見える世界

 続いて内田氏がITエンジニアの視点から自動車にまつわるデータ共有について解説した。

 内田氏によれば自動車に関係するデータは

1.メーカー・ディーラーサービスに関わるもの

2.ADAS・自動運転に関わるもの

3.社会サービスに関わるもの

4.モビリティサービスにかかわるもの

の4つに分類できるという。

 前者2点についてはECUやパワートレーンに関する情報、オブジェクトの点群データなどの「非常に濃い情報」が、後者2点については位置情報を中心とした「それほど濃くない情報」が、それぞれ必要だと述べた。

 続く話題はデータの取り扱いについてであった。

 2022年にはコネクテッドカーが1億4000万台に達するといわれているが、これらがシングルプラットフォームで動くことにはリスクがあるという。ハブアンドスポーク型のプラットフォームの場合、一カ所が壊れるとサービスが低下してしまうので、内田氏は分散型のシステムが必要だと語った。

 分散型システムでは金融分野のブロックチェーンがよく知られているが、自動運転の世界では仮想通貨取引などに比べて取り扱うデータの数も量も桁違いに多いため、ビットコインと同じような仕組みにすることはコスト面・開発面で非現実的だと指摘した。

 そのうえで内田氏は、前述の情報分類に立ち戻り、「非常に濃い情報」はテレマティクスのサービスプロバイダーのプラットフォームをつなげてデータを共有し、巨大なデータはキャリアがエッジサービスで提供するリポジトリ上に置き、「それほど濃くない情報」はテレマティクスのプラットフォームの周辺に配したブロックチェーンを活用するという手法を提案した。ただし、「それほど濃くない情報」でも情報量は十分多いので、データの一次加工を車両側で行うことで通信量を減らすことを試みているという。

 講演のあとは、白石氏と内田氏によるパネルディスカッションを行った。それぞれの講演内容について意見交換したほか、視聴者からの質問にも答えた。

 

【まとめ】

 最後に内田氏は「自動車に関わる人々はレベル3、レベル4の自動運転車を早く見たいと考えている」「その世界を見るためにいろいろなことをやろうと思っているので、ぜひ意見を聞かせてほしい」と語った。

 そして、白石氏は「自動車メーカーと、その他の業種がつながるためのものがプラットフォームであり、このつながりが実現できれば、自動運転が必ず日本発で実現できる」という前向きなメッセージでしめくくった。

 


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