公共交通―民間企業のジョイントベンチャーがコネクテッドカーの新たな道を示す


自働車・スマートシティ・都市交通の交点をジャーナリストSiegfried Mortkowitzが探る

2017/9/19

※この記事はTU-Automotiveの協力によオリジナルを翻訳して提供しています

 

 都市は、そこに暮らす住民のため、また特に税金を納めてくれる事業者を惹きつけるために、より暮らしやすいものにする必要がある。地方自治体にとって主な目標は、車の渋滞を減らし化石燃料による汚染を減らすことだ。 これら目標の達成、つまり民間の自家用車に代わるモビリティ・ソリューションを見つけるためには、民間で開発された技術が必要になる。 その一方で、自動車販売が減速し始めると、自動車メーカーにとっては公的機関が顧客として必要になってくる。

 

 「公的機関と民間企業が相互依存することは、とても自明なことになってきている」。ネッカーマン・ストラテジックアドバイザーズのマネージングディレクターであるLukas Neckermann氏は言う。著書「Smart Cities, Smart Mobility: Transforming the Way We Live and Work. (スマート・シティ、スマート・モビリティ:私たちの生き方と働き方を変える」」があるNeckermann氏はこう話す。「公的機関と民間企業はそれぞれ、もう一方の存在なしには機能しないし、もちろん相反するようなことはすべきではない。たとえば、Uber(米ウーバー・テクノロジーズ提供の配車アプリ)が、ある都市で問題を抱えていたときは、いつでも、それは都市と共に機能しようとせず、都市に反するようなオペレーションをしていたためだ」

 

 スウェーデン政府が立ち上げた戦略的イノベーションプロジェクトであるドライブ・スウェーデン(Drive Sweden)のプログラムディレクター、Jan Hellåker氏は、今後生き抜こうとしている伝統的自動車メーカーは新しいモビリティ・エコシステムに適応する必要があり、そのため、これら自動車メーカーは都市や公共交通の運営主体を将来の顧客として捉える必要がある、と述べる。「ほとんど全ての自動車OEMは二つの方向性を追求している。一つの方向は製品をより先進的で自律走行化すること。もう一つの方向性として、ほとんどの自動車メーカーが独自のモビリティーサービス・ブランドを生み出しているということだ。これら2つの方向性がうまく調和しないのは、むしろ当然だ。私は、これら2つの方向性が内部である程度、競争していく必要があると思う。もちろん、程度の差はあれモビリティ・サービスプロバイダーになろうとする伝統的メーカーは、すべての種類の公共機関当局者と話をする必要がある。自然なことだが、自国市場ではこうしたことが容易になる」

 

 国内に自動車メーカーを持たない国では、状況はまったく異なっている。「こうした国は新しいモビリティソリューションを進化させたいため、特に進歩的な国は国外の自動車メーカーと関係を構築しようとしている。しばしば金銭的なインセンティブも伴って、例えばシンガポールやドバイなどで、こうしたことが進んでいる」

 

 ヘルシンキ・メトロポリア応用科学大学のスマートモビリティ・コンピテンスハブは、公共交通機関からのニーズを受けて、新しいモビリティ研究の最前線に立っている。スマーターモビリティ(Smarter Mobility)のプロジェクトディレクター、Harri Santamala氏は、プロジェクトを定義づけるのは必ずしも公的機関ではないと述べる。「我々はヘルシンキのオフィスと連携して動いているプロジェクトも、公共交通機関と間接的に関連するプロジェクトもあるが、ときにはフォーカスグループがエンドユーザーになることもある」

 

 最近、Santamala氏の下で行われた、自動運転シャトルバスを公道で走らせる2年間のプロジェクトは大きく報道された。新しい交通エコシステムへの道を切り開こうとするヨーロッパの都市にとって、シャトルバスは初期段階の交通モードのようだ。「ヨーロッパのほぼすべての大都市に独自のシャトルバス・プロジェクトがあるようだ」とSantamala氏は言う。「こうした都市が約束するモビリティ・サービスは、まだ十分に機能していないが、実用に近づいていて、都市にとっては非常に魅力的なものだ。それは、最初と最後のワンマイルに、非常にコストを抑えたテクノロジーを使って、公共交通機関の新しいモードを導入することになる。都市側は、それを内部のオートメーション化の第一歩と考えていると思う。ラストマイルとは概念的に、広くないエリアをドライブし、移動距離はそれほどないためスピードも速くない、といったコンセプトだ」

 

 シャトルバス・プロジェクトのために大学は入札をして、フランスの会社EasyMileの車両を選んだという。 「多くの企業がプロジェクトに興味を持っていた。EasyMileにとっては、最初のオープンな公道試験だったため、彼らは技術の多くを学び、この領域でよい視野を得ることになった」とSantamala氏。フィンランドのように国内に自動車メーカーを持たない国は、研究車両を公的機関によって調達するほかないのだ。

 

 一部のオブザーバーは、公的機関と民間モビリティサービスプロバイダーの協力関係が高まる中で、商業競争が存在しない可能性が出てくるという潜在的な危険性を認識している。 「選ばれたパートナー1社による公共交通の独占的支配がないことを願っている。顧客が決定する権利を持つ、という形であるべき」とSantamala氏は言う。

 

 MaaS Globalの創設者兼CEOのSampo Hietanen氏は次のように述べる。「最大の問題は、一部の都市では市民のためにモビリティ・アズ・ア・サービスを生み出すため、公共交通と民間企業が一体となってしまっている。それは入札のある公共プロジェクトだ。これは公共の権威者が勝者1人を選ぶといった形で、確実に物事をダメにしてしまう。1企業が提供するソリューションで、カーオーナーシップと対抗しようとするのは税金の無駄遣い。エンドユーザーの視点から考えてみればいい。エンドユーザーは、1プロバイダーが提供する都市交通モビリティサービスか、カーオーナーシップが提供する選択の自由か、を得る。これでは、うまくいかない。公共機関と民間が一体になるということは、もし間違ったやり方をすれば、物事を遅らせてしまう。消費者は選択する自由を持たなければならない。そうでなければ、うまくいかない」

 

 都市や地域が、新しいモビリティシステムを構築し、自動車メーカーやモビリティサービス・プロバイダーとの協力関係を深めるにつれて、このモビリティネットワークを誰が運営するのか、という問題が持ち上がることは避けられない。独ベルリンのモビリティスタートアップdoor2doorの上級コミュニケーションマネージャー、Lidia Fabian氏は、少なくとも今のところ、都市側にモビリティを管理させるのが最善だと言う。 「私たちがモビリティサービスを運営しない理由は、都市側が自分たちでやりたいのだと思ったからだ」とFabian氏は説明する。「都市が意思決定者である場合、新しいモビリティサービスの効率性と拡張性は、格段に優れたものになる。 具体的な例として、Uberがマンハッタンで事業を始めたとき、突然、それまでに比べて5万台多い車が街に出た。 そう、新しいモビリティサービスが出現したものの、それほど役立たなかった。 統計によると、これらのサービスを公共交通システムに統合すると、ストリートを走る車の数は減ったはずだ。 理想的には、都市は他のすべてのモビリティサービスを我々のプラットフォームで統合するチャンスがある」

 

 ヘルシンキ・メトロポリア大学のSantamala氏は、異なった見方をしている。「問題は、誰がUberがやったような方法で、大多数の人数を惹きつけるのに十分なほど大規模になれるか、ということだ。Uberはゼロからスタートした。自動車OEMはゼロからのスタートではない。誰が先にクリティカル・マス(サービス普及のための分岐点)を超えていけるか、ということに懸かっている。なぜなら、より多くの顧客を持てば、モビリティのプロバイダーからよい取引条件を引き出せる。つまりは、誰がスケールアップできるのか、だ」

 

(翻訳・友成 匡秀)

オリジナル記事(英語)

TU-Automotive Japan 2017カンファレンス

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