CES 2019 レポート


CES 2019 – 簡易版速報レポート (日本語版)

 

Date:2019/02/04

 

 

※この記事はSBDより提供いただき掲載しています。

 

数字で見るCES 2019

CESは全米民生技術協会(CTA: Consumer Technology Association)が主催し、毎年1月に開催される。CES 2019 は米国ネバダ州ラスベガスにおいて2019年1月8日から11日にかけて開催された。

 

CES での主な発表

発表を行った企業の内訳

キーポイント: 半導体メーカーからの発表が減少、一方でネット/家電業界のプレーヤーの重要性は年々高まっている。

発表の内容

キーポイント:新製品の発表が占める割合は年々増加、提携に関する発表は減少している。

主なトピック

キーポイント:高レベルの自動運転技術やインフォテイメントが引き続きトピック上位を占めた。VPAもランクを一つ上げ、昨年大幅なランクダウンを見せたADASがトップ3に再浮上した。

注:掲載データはCES 2017-2019のプレスリリース約420件を分析した結果に基づく。

 

CES 2019 – キートレンド

インフォテイメント分野の競争が激化

 どの自動車メーカーも、Google Automotive Services に対応する Android Automotiveを実装したインフォテイメントシステムを発表できる段階では無い(ただしVolvoによる PoleStar 2への搭載は間近)。一方で、Bosch を含む複数のTier 1サプライヤーはすぐにでも市場に出せるソリューションを披露した。また、Toyota および Byton は独自のインフォテイメントプラットフォームを新たにリリースし、急速に変化する消費者ニーズに対応可能であることを示していくものと予想される。HEREは「ナビゲーション・オン・デマンド」と銘打った、Alexaを統合した常に最新状態で提供されるナビサービスを発表した。BMWおよびMercedes-Benzは、ユーザーが車内のモードを選択して照明や音楽、温度を調整できる機能を披露した。Mercedes-Benzの機能ではさらに、コネクテッドデバイスで計測したユーザーの心拍数も考慮する。

 

実現技術の成熟

 CESの喧騒の中ではサプライヤーの存在がかき消されてしまうことがあるが、こうした企業の発表は数年後のCESで自動車メーカーがどのような発表をするかを予測するためのバロメーターとなる。2019年のCESでは、Harman のサウンドキャンセリング技術や Magneti Marelli のスマート照明、Mitsubishi Electric の新型ディスプレイ、Panasonic のデジタルミラー、Denso の車載エッジコンピューティング(トヨタらが主導する「Automotive Edge Computing Consortium 」の一環)、Alps によるリモートパーキングに最適な測位システムなど、実現技術の成熟が多くみられた。自動運転の分野では、Intel が傘下のMobileyeとGreat Wall Motorsとのパートナーシップ締結を発表した。

 

プライバシー/セキュリティ・バイ・デザイン

今回のCESでAppleが唯一行った視覚的な発表は、プライバシーの重要性を参加者に訴える20フィートの広告だった。インターネット大手GoogleやAmazonとの提携を検討する自動車業界にとっては非常に重要なトピックである。こうした背景から、Otonomo はGDPRに準拠した「ニュートラルサーバー」を発表、これは先ごろDaimlerに採用されている。セキュリティも重要なトピックである。 Denso はブロックチェーンがサイバー脅威に有効であることを示すデモを行い、 Blackberry は第三者にライセンス提供する新たなセキュリティツールを発表した。

 

技術系大手とスタートアップに引き続き注目が集まる

今年度のCESにおいても、LG のロールアップ(巻き取り可能な)TV、Samsung の5Gデバイスのプロトタイプ、P&G の高精度スキンケアシステム、その他数々のゲーミングアクセサリやスマートウォッチ、ノートPCといった消費者向け製品の発表にメディアから大きな関心が集まった。スタートアップへの関心も高く、スタートアップ専用のセクションが「Sands Expo」に設けられた。中でもSBDが注目したものには、Epilogによる自動運転車向け8Kカメラの発表、SapientXによる車載AIボットの三菱との共同開発、Gestoosによるユーザー独自のジェスチャーに対応するジェスチャー認識プラットフォーム、TUCによる従来の車両アーキテクチャに代わるモジュール式プラグアンドプレイソリューションなどがある。

 

バーチャルパーソナルアシスタントの車内での存在感が増す

Google AssistantやAmazon Alexa、Baidu DUerOSにより、車内の機能拡大の可能性が示された。バーチャルパーソナルアシスタント(VPA)を利用した車内ショッピングのデモも初めて披露された。BMW は Daimler 同様、Nuanceの技術を採用した独自のVPA開発に力を入れており、Harman はこうしたVPAを一つのユーザーエクスペリエンスにまとめるソリューションを発表した。HERE と Telenav も、Amazonとのパートナーシップを締結しAlexaの統合を発表した。こうした傾向により、車内で複数のVPAの選択肢がユーザーに提示され、混乱を招く可能性がある。

 

車内Eコマースが拡大

CES 2019では2つのタイプの車内Eコマースが披露された。1つ目は車内マーケットプレイスで、ヘッドユニットを介して第三者製品およびサービスの購入・予約ができるというものだ。FCAは GM が昨年発表したものに類似したソリューションを発表、Honda はConnected Travelと共同開発したソリューションのデモを行った。また. SiriusXM はVisaと提携し車内Eコマース向けプラットフォームを開発することを発表した。一方 Ford は、同社が車内Eコマースソリューションで提携するDasheroのデモを実施した。2つ目は、FaaS(Features as a Service)として知られるタイプで、購入後ユーザーが車両のオプション機能を利用できるようになるというものである。Audi は同社の新型e-tronでスマートフォン統合やパークアシスト、コネクテッドナビサービスなどの機能を提供することを発表した。

 

OEMのEV計画が現実化

OEM各社がこれまで計画してきたEVの未来が現実のものとなりつつある。2019年および2020年は、Audiや Porsche、Mercedes-Benz などが開発していたEVが市場にリリースされ、パワートレイン電動化の形成期となりそうだ。EVの航続距離はおよそ250マイル(約402km)が標準となっており、複数のOEMが航続距離のさらなる向上をはかっている。また、DC急速充電機能の浸透により充電時間も短縮し続けている。

 

EV充電インフラ開発が進む

充電インフラの開発や関連EV技術は引き続き更なる発展をみせた。充電ポイントへのアクセスが良好であることは引き続きEV普及において重要な条件であり、業界のプレーヤーは(ハードウェアおよびソフトウェアプロバイダと同様に)主導権争いを激化させ、より強固な協力関係を結んでいる。家庭用充電ソリューションをより手軽に利用できるようにするためにOEMは異なるアプローチをとっている。Teslaのように車両に充電器を標準装備し設置工事まで行うケースや、Amazon Home Servicesなどの第三者にそれらを任せるものもある(例: Audi)。Audiのスマートホーム充電ソリューションなどに見られるように技術は急成長しており、家庭用エネルギー管理システム(HEMS: Home Energy Management Systems)との連携によるオフピーク時のより安価な充電や、バッテリー管理機能との連携、家庭ですでに蓄電してある再生可能エネルギーを優先して消費するといったことが可能となっている。

 

運転時以外の車内での過ごし方に焦点

今年も高度な自動運転車実現に向けた取り組みに多くの注目が集まった。ただし今回のCESでは、自動運転によって運転操作に費やす時間が減少することを鑑み、コックピット内でのユーザーエクスペリエンスにより焦点を当てた発表も目立った。それらを代表するものとして、Audi の没入感の高いモバイルシアター体験や、車内環境をユーザーのニーズに合わせてインテリジェントに構成可能な Kia のコンセプト、柔軟性の高いインテリアレイアウトを実現した Faurecia のプロトタイプなどがある。

 

モノの移動に注目が集まる

今年のCESでは「ヒト」だけでなく「モノ」の移動にもスポットライトがあてられた。Ford や Toyota のCES 2018での発表に続き、Mercedes-Benz,、HERE 、Denso が、次世代ロジスティクス事業の構築において担う役割について計画を発表した。自動運転車と比べて消費者の関心を引くトピックではないものの、渋滞緩和や高速道路での安全性向上に向けモノの移動の在り方を変えていくことが重要であるとの認識は高まっており、ロジスティクスは自動運転技術を比較的容易に導入しやすいと言える業界でもある。

 

V2Xとスマートシティがより具体化

Ford は5G対応のV2Xを2022年以降の全ての新車に導入する計画を発表したが、依然としてスマートシティと車両との通信を実現するためのインフラは欠如している。また「Westgate Hall」 にスマートシティ専用ゾーンが設けられたものの、CESの中ではいまだ定着したとは言えないトピックの一つだ。そうした中 Bosch と Continental はスマートシティに関連し一見性質が全く異なるようにも思えるユースケースを結合させるビジョンを発表した。ToyotaやVolkswagenといった他の大手OEMは2018年に、5Gと「競合」するDSRCプロトコルを採用した車両の販売を発表している。

 

カーシェアリングの差別化

Karma Automotiveはカーシェア/ライドシェアプラットフォームのRidecellと連携し、モビリティ部門を新設することを発表した。これまでカーシェアリングの大半は、短距離移動をできるだけ手ごろな料金で実現することを目指してきた。Karmaが他と異なるのは、高級ホテルやリゾートとのパートナーシップを活かし同社のプレミアムモデルを宿泊客に体験できるようにしようとしている点である。カーシェアリングは、ホテル/リゾート利用客の滞在をより快適なものにするためのサービスの一環として提供される。同サービスは3~5台の車両の試験運用を皮切りに、2019年末までには100台に拡大される予定である。

 

自動運転がオフロードへも拡大

自動運転ソリューションは通常ヒトやモノの移動を対象としているが、CES 2019において Honda や Hyundai は、緊急サービスなどの重要な操作や娯楽を目的としたオフロード向け自動運転ソリューションを搭載したコンセプトを出展した。オフロード向け自動運転車のコンセプトに関しては、以前 GM でも軍用あるいは緊急サービスなどへの利用可能性について言及している。

 

ソーシャル機能としてのモビリティ

HERE Technologiesは新たなアプリ SoMo を他のデモと共に発表した。同アプリが他のモビリティアプリと異なるのは、ユーザーが結婚式やライブなど独自のイベントを設定し、友人や知人を招待して移動計画を立てられるという点だ。また、相乗りや公共交通機関での移動もサポートしており、将来的にはLyftやUberといったプレーヤーを統合しマルチモーダルなMaasプラットフォームの実現を視野に入れている。

 

大型というだけでは不十分

Tesla や Byton 等に代表されるような超大型車載ディスプレイに対して、人々はすでに無感動になっている。また設計者にとって大型のフラットディスプレイは、ブランドの差別化を図る上で有利となり得る設計特性を組み入れることを困難にさせる、頭痛の種のようなものだ。Visteonでは、ウルトラワイド型曲面ディスプレイをダッシュボードに搭載することで、設計に自由度を持たせているとのことである。

 

ADAS分野での新たな発表

Valeoの「Disappearing trailer」(トレーラーけん引時に車両のバック操作をサポートする機能)や、センサをフロントグリルではなくヘッドランプ内に設置するというPioneerの新たなアプローチなど、新たなADASのユースケースが発表された。Nvidiaはレベル2以上に相当する自動運転システムや、ContinentalおよびZFといったサプライヤーとの提携を発表した。

 

目に見えない技術「Shy Technology(シャイ・テク)」

BMWは「車内において技術を人々の目に触れないようにしたい」とし、同社のコンセプトカーiNextで「Shy Technology(シャイ・テク)」を披露した。同コンセプトカーでは、乗員が車内のあらゆる表面から車両制御コマンドを使用することができる。また乗員はスマートプロジェクタ上でお気に入りのコンテンツを見たり制御したりすることが可能となる。この「シャイ・テク」の目的は、あらゆるボタンやディスプレイを車内から廃し、より自然でクリーンなインテリアを作ることである。

 

North Hall で発表された空飛ぶタクシー

Bell が発表した空飛ぶタクシーには、商業的、技術的、法的な面から実現の可能性について多くの疑問もあったが、同社は2025年までの各都市での運用開始に自信を見せた。SBDの視察チームも最新のプロトタイプに乗車したが、車とヘリコプターと超大型ドローンとを掛け合わせたような不思議な感覚だった。自動運転のロジックの大部分は、パートナーであるThalesと共同開発されたものである。

 


SBDでは世界各国の主要なモーターショーおよびイベントを視察し、最新動向、参加企業の重要な発表、新製品・技術に対するSBDの評価、ビジネス戦略への影響分析などを、画像や動画と共にいち早く提供しています。英語版レポートは通常イベント開催から約1週間後、日本語版は開催から約1カ月後に発行します。今回の「CES 2019」のご契約者様向け英語版レポートは先日発行され、日本語版も近日発行を予定しております。

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